2020年03月04日

第5話「藩校立志」⑥

こんばんは。

民間の調査会社が実施している「都道府県魅力度ランキング」がよく話題になります。2019年、なんと佐賀県46位でした。そして最下位の47位は…茨城県です。

この二者ですが、幕末には“科学技術”の佐賀藩と“尊王思想”の水戸藩。双方ともトップランナーと言って良い存在でした。

魅力度ランキングへの「異議あり!」はさておき、本編に戻ります。
今回は、“団にょん”こと島義勇が、水戸藩(茨城)に立ち寄るところから。


――後に札幌を創る男、諸国遊学中に水戸(茨城)に立ち寄る。

島義勇水戸藩尊王思想家・藤田東湖に面会を許される。

と申します!藤田先生にお目にかかれるとは、光栄の至りです!」
いつになく畏まっている“団にょん”である。

くんと言ったか。佐賀の者と聞いたのでな。」
藤田東湖は、いかにも一角(ひとかど)の人物とわかるような風貌である。

「はっ、恐縮でございます!」

――がここまで敬意を払う理由は、著名な思想家であるだけではない。

藤田東湖は、御三家水戸藩徳川斉昭を支える“政策ブレーン”でもあるのだ。

そして江戸で修業してきた佐賀藩士たちとも親しいらしい。
「そうだな。永山十兵衛どのはお元気か。」

永山先生には、藩校でご教授をいただきました。」
殿鍋島直正)の命令で、永山東北地方を調査した。
その言葉は、まっすぐの心に届いたのである。

「そうだ、枝吉神陽佐賀じゃな。あの男は賢いのう!」
枝吉は親族ではございますが、飛びぬけておりまして…」

…あれっ、藤田様からの近況伺いだけで、話が終わってしまったぞ。
まだまだじゃな!がんばれ団にょん”!


――やや“朝ドラ”風のナレーションが入ったところで、舞台は、佐賀城下に戻る。



「新田(にった)どの!ぬかるなよ、はさみうちじゃ!」
楠木正成に成りきった男の子が駆ける。少し成長した大隈八太郎である。

「楠木(くすのき)どの!こころえた!」
同じ南朝の武将“新田義貞”役は、八太郎の友達である。

「尊氏(たかうじ)そこにいたか、かくご!」
「直義(ただよし)!おいつめたぞ!」

足利勢に見立てた2人と戦っているのだ。

――この南北朝時代の“合戦ごっこ”、相手方が乗り気でない。

「待たんね!わしも楠公(なんこう)さんが、よかごた!」
「そうたい、南朝方(なんちょうがた)がよか!」

歴史上は、北朝方の足利尊氏勝者とされる。
しかし佐賀では、南朝方楠木正成が人気のようだ。


――そこに、15歳ぐらいの男子が通りがかる。うつむき加減である。

いきなり登場した佐賀の七賢人(その4)副島種臣である。何やら呟(つぶや)いている。
「また、をかいてしもうた…」

後に副島家の養子になるのだが、この頃の名は“枝吉次郎”。
あの佐賀藩の誇る天才・枝吉神陽である。

そんな次郎の耳に、子どもたちの声が入ってくる…
八太郎ばかり、楠公(なんこう)さんで、ずるか!!」
「そうたい!楠公(なんこう)さんがよかたい!」

――結局、子どもたちは“合戦ごっこ”から“喧嘩”を始める。

激しいつかみ合いをする、八太郎くんたち。

次郎独り言をつぶやく。
「あ~、子どもは良かね悩みが無うて!」

「やはり楠公さんが、大人気なのも兄上の影響かのう…」

兄貴は、偉大な枝吉神陽
次郎副島種臣)、出てくるなり何やら悩みが深い…

(続く)

  


Posted by SR at 22:22 | Comments(0) | 第5話「藩校立志」