2025年04月05日

「シリーズ・増える賢人の謎(⑨25賢人・唐人町~白山)」

しばらく更新を怠っていたら、桜も散り始めるか…という時期。旧年度は去り、新年度が訪れました。凡庸な人生を送っても訪れる、出会いと別れの季節。

読みごたえがある物語になのかはともかく、誰でも、それぞれの“自伝”である人生を歩んでいるのかもしれません。
「シリーズ・増える賢人の謎(⑨25賢人・唐人町~白山)」
――場面を「佐賀駅前から佐賀城方面へと続く、大通り」に戻します。

文学には「自伝的教養小説」と呼ばれるジャンル(分野)があるそうで、佐賀を舞台にした、その分野の小説で有名なものがあります。

写真向かって右側。県内の神埼出身、下村湖人の書いた「次郎物語」です。

昭和期の戦前から戦後の激動期の20年近くをかけて、第1部から第5部までが執筆された作品。

本当は第7部まで構成されていたようですが、著者・下村湖人の逝去により、未完のまま終わったという情報がありました。

――なお、作者は明治期の生まれですが、

作品の時代設定は昭和初期に置き換えられているようです。

里子に出され、継母を迎えたりした少年次郎がやがて中学に入り、社会に目を見開いていく。少年から青年への成長。

その精神の遍歴を描いた自伝的教養小説…というのが、辞書的な物語のあらすじになります。
「シリーズ・増える賢人の謎(⑨25賢人・唐人町~白山)」
――幾度か、少年期の物語を中心に映像化もされています。

おそらく“最新作”は1987年(昭和62年)のもの。神埼辺りが舞台だと思われ、ゆるやかに流れていく河を、木造の舟が行く…オープニングだったはず。

歌手のさだまさしさんがクラッシックの名曲『モルダウ』に詞を付けた、『男は大きな河になれ』という楽曲が主題歌でした。

さださんは隣県の長崎出身ですが、この歌を聴くと「ちゃんと、佐賀が舞台の曲になっている…」という印象を受けるのです。

――物語のキーワードは、先述のとおり「精神の成長」。

下村湖人には教育者として、地元・佐賀で中学教師を務め、校長など教育現場を管理する立場での経歴もありました。

のち下村は、“社会教育”に専念することになりますが、この次郎物語の著者が「この人を見よ」と、その人格を讃えた“同志”がいました。
「シリーズ・増える賢人の謎(⑨25賢人・唐人町~白山)」
――最初の写真で向かって左側。県内の鹿島出身の田澤義鋪。

その経歴は、地方の行政官や政治家でもありましたが、“青年教育家”と説明した方がよさそうです。

特に地方の青年に対しては、教育が充分に行き渡っているとは言えない時代。

田澤義鋪は、着任地の静岡県の農村で青年たちを集めて、自由創造の精神により、教養を高めるという組織を志向したようです。

――これが「青年団」という組織に発展をし、全国に拡大をしていきます。

のち田澤は、貴族院の議員にもなり、天皇陛下にまで青年団の活動について進講するなど、著名な人物となっていきました。

ところが、「道義」を重んじ、品格のある日本を作っていきたい、田澤の想いとは別の方向に、国は進んでいきます。

――1936年(昭和11年)の「2・26事件」の後…

田澤は、すでに青年教育や組織の指導で著名であったためなのか、内務大臣として閣僚にならないかとの打診を受けます。

私は昭和初期の歴史には詳しくないのですが、「2・26事件」は陸軍青年将校が蜂起して制圧され、実質的に軍部が政治を主導する契機になった出来事。

数回前に「唐津の近代建築家たちの英語の先生」として紹介した、高橋是清蔵相などの政府要人がこの事件で襲撃を受けて、落命しています。
〔参照:「シリーズ・増える賢人の謎(⑦25賢人・佐賀銀行前)」

田澤は自身が求める「道義」や「自由な精神」と相容れない性質をもった、事件後の新内閣に入る誘いを断ったそうです。

――暗い道へと突き進んでいく、祖国を案じながら、

太平洋戦争が混迷を深める、昭和19年(1944年)。当時も講演などの活動を続けていた、田澤義鋪

四国の善通寺への旅で、“敗戦”について予期する言葉を残して、その場に倒れ、同地で帰らぬ人となったそうです。

――以上です。年度替わりの時期に…

青年教育家」という肩書き以外は、今までほとんど不知であった人物について考えてしまい、一時完全に動きが止まってしまいました。

戦国時代は言うに及ばず、私がよく調べる幕末から見ても、さらに近い時代の人物である、田澤義鋪下村湖人

「新しい知識は物の見方を変える」と思うので、今度、佐賀の大通りに行く機会があれば、きっと、お二人の銅像からも何かが感じ取れる…ような気がします。





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Posted by SR at 23:16 | Comments(0) | 戦略編(S)
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