2020年01月23日
第1話「長崎警護」⑥-2
こんばんは。
前回の続きです。75分の放送中、45分を回ったイメージです。
――翌朝の未明。

長崎奉行所に、待望の戦力が到着する。
「開門を願う!大村純昌、ただいま参陣した!」
まだ夜も明けきらぬうちに、肥前大村藩が長崎に到着した。
武装した大村藩兵が奉行所の近くに待機していた。
「おおっ!大村どのか!」
長崎奉行・松平康英、待ち望んだ戦力の到着に喜びを隠せない。
「遅くなり申した!」
肥前大村藩の若き藩主、大村純昌が応える。精悍な顔つきである。
大村藩の居城・玖島城は現在の長崎県大村市にある。
船が直接出入りのできる、いわゆる“海城”が本拠地なのである。
――奉行の喜びはそのまま、大村藩への期待でもあった。
若き大村藩主は、よく通る声でこう言った。
「異国船を焼き討つ支度をしております。」
「大村どの!我が意を得たり!」
…松平康英は、大村藩の手回しの良さに感銘を受けた。
「伝令のお役人から、詳しくお聞きしましたゆえ。」
…奉行所の組織も、非常時に適応しつつある。康英は潮目が変わったと判断する。
「不埒な異国船を討つぞ。もはや人質はおらん。不意を突いて近づけば勝機はある。」
「心得ました。大村にも小舟の扱いに長けた者がおります。」
――着々と、フェートン号を焼き討ちする作戦が練られていた…
その時、伝令が走り込む。
「申し上げます!件の軍船が動き出しております!」

「なにっ!」
奉行と大村藩主は、物見台に移動する。
――フェートン号は既に錨を上げ、長崎港外へと向かっていた。
当然、奉行所には追撃できる性能の軍船の持ち合わせはない。
こうして、長崎奉行所と肥前大村藩による“異国船との戦”は幻に終わった。
(続く)
前回の続きです。75分の放送中、45分を回ったイメージです。
――翌朝の未明。

長崎奉行所に、待望の戦力が到着する。
「開門を願う!大村純昌、ただいま参陣した!」
まだ夜も明けきらぬうちに、肥前大村藩が長崎に到着した。
武装した大村藩兵が奉行所の近くに待機していた。
「おおっ!大村どのか!」
長崎奉行・松平康英、待ち望んだ戦力の到着に喜びを隠せない。
「遅くなり申した!」
肥前大村藩の若き藩主、大村純昌が応える。精悍な顔つきである。
大村藩の居城・玖島城は現在の長崎県大村市にある。
船が直接出入りのできる、いわゆる“海城”が本拠地なのである。
――奉行の喜びはそのまま、大村藩への期待でもあった。
若き大村藩主は、よく通る声でこう言った。
「異国船を焼き討つ支度をしております。」
「大村どの!我が意を得たり!」
…松平康英は、大村藩の手回しの良さに感銘を受けた。
「伝令のお役人から、詳しくお聞きしましたゆえ。」
…奉行所の組織も、非常時に適応しつつある。康英は潮目が変わったと判断する。
「不埒な異国船を討つぞ。もはや人質はおらん。不意を突いて近づけば勝機はある。」
「心得ました。大村にも小舟の扱いに長けた者がおります。」
――着々と、フェートン号を焼き討ちする作戦が練られていた…
その時、伝令が走り込む。
「申し上げます!件の軍船が動き出しております!」

「なにっ!」
奉行と大村藩主は、物見台に移動する。
――フェートン号は既に錨を上げ、長崎港外へと向かっていた。
当然、奉行所には追撃できる性能の軍船の持ち合わせはない。
こうして、長崎奉行所と肥前大村藩による“異国船との戦”は幻に終わった。
(続く)