2020年01月21日
第1話「長崎警護」⑥-1
こんばんは。
“佐賀の七賢人”では最年長の鍋島直正が誕生する6年前。
1808年のエピソードを続けています。
初回は75分で放送のイメージ。今までで40分ほど経過したとお考えください。
場面の転換が多いため、その⑥は分割してお送りします。
⑥混乱する佐賀城下。長崎の事件は決着へ
――その頃、佐賀城下にも長崎の異変が伝わっていた。
――ゴンゴン!ガタガタ!!
あちこちで非常事態と出動命令の鐘が、響き渡る。
城下を走り回る侍たち。
――カンカンカンカン!ゴンゴンゴン!
土煙が舞い、砂ぼこりが立つ。
大音声は街全体に反響し、町衆たちも眉をひそめている。
――ある武家屋敷でも走る侍たちが…

ドシン!
…若侍が、走り込んできた同僚と出合い頭に激突する。
「痛たた…何だ、お前か。曲がり角は注意しろ!そうじゃ、ご家老がどこにいったか知らぬか!?」
「私も2日前に囲碁のお相手をしたきり、お会いしてない!」
「それで、どこに居られる?心当たりはないか!」
「私もご家老を探しに来たのだ…まだ長崎に向かったとは聞いていない。佐賀に居られると思う!」
――長崎。事件から1日が経過していた。
いずれかの藩が到着するまで、時間稼ぎを続ける奉行所。
「兵力が整わねば、まともな交渉もできぬ…」
長崎奉行・松平康英は、オランダ商館長に対して商館員2名の救出を約束していた。
しかし手持ち戦力の無い状況では、相手を牽制することも難しい。
――その頃、長崎湾内では
イギリス国旗を掲げた“フェートン号”は武装ボートを出し、我が物顔で偵察をしていた。しかし、こちらも内心は焦っていた。
「この国の連中は、要求に応じないというのか!もしや…我々と戦えるとでも?」
フェートン号の艦長も苛立っていた。
艦長の意を受け、上官が乗組員テッドに指示を出した。
「オランダの奴を1人引っ張って来い。取引の材料にする!」
フェートン号はオランダ商館員1名を解放した。
人質1名と引き換えに、まずは飲料水を確保したのである。
――さらに艦長の指示で“フェートン号”は、長崎奉行所を恫喝した。
奉行所に伝達された内容は、概ねこのように挑発的だった。
「飲料水をもっと出せ!充分な食料!肉も必要だ!もし応じなければ、港の船どもを焼き払う!」
冷静な長崎奉行・松平康英もこれには激昂した。
「何たる屈辱!佐賀の…鍋島の兵力さえあれば、数では圧倒できたものを…」
怒りに震える奉行を部下たちは不安げに見つめた。
「商館員の無事の帰還が第一」
オランダ商館長との約束がある。
長崎港内には、多数の和船や唐船もあり、長崎奉行所はそれらも守らねばならなかった。
フェートン号の要求には、応じるほかなかった。
他に手立てもなく、奉行所は飲料水、食料を用意した。
肉については、オランダ商館から家畜を提供してもらった。
本来ならば、無法な異国船の要求を蹴りたかった長崎奉行。
オランダ商館長との約束、長崎港内の船の安全のため、苦渋の決断で要求に応じた。
結果、2人目の商館員も無事に解放された。
(続く)
“佐賀の七賢人”では最年長の鍋島直正が誕生する6年前。
1808年のエピソードを続けています。
初回は75分で放送のイメージ。今までで40分ほど経過したとお考えください。
場面の転換が多いため、その⑥は分割してお送りします。
⑥混乱する佐賀城下。長崎の事件は決着へ
――その頃、佐賀城下にも長崎の異変が伝わっていた。
――ゴンゴン!ガタガタ!!
あちこちで非常事態と出動命令の鐘が、響き渡る。
城下を走り回る侍たち。
――カンカンカンカン!ゴンゴンゴン!
土煙が舞い、砂ぼこりが立つ。
大音声は街全体に反響し、町衆たちも眉をひそめている。
――ある武家屋敷でも走る侍たちが…

ドシン!
…若侍が、走り込んできた同僚と出合い頭に激突する。
「痛たた…何だ、お前か。曲がり角は注意しろ!そうじゃ、ご家老がどこにいったか知らぬか!?」
「私も2日前に囲碁のお相手をしたきり、お会いしてない!」
「それで、どこに居られる?心当たりはないか!」
「私もご家老を探しに来たのだ…まだ長崎に向かったとは聞いていない。佐賀に居られると思う!」
――長崎。事件から1日が経過していた。
いずれかの藩が到着するまで、時間稼ぎを続ける奉行所。
「兵力が整わねば、まともな交渉もできぬ…」
長崎奉行・松平康英は、オランダ商館長に対して商館員2名の救出を約束していた。
しかし手持ち戦力の無い状況では、相手を牽制することも難しい。
――その頃、長崎湾内では
イギリス国旗を掲げた“フェートン号”は武装ボートを出し、我が物顔で偵察をしていた。しかし、こちらも内心は焦っていた。
「この国の連中は、要求に応じないというのか!もしや…我々と戦えるとでも?」
フェートン号の艦長も苛立っていた。
艦長の意を受け、上官が乗組員テッドに指示を出した。
「オランダの奴を1人引っ張って来い。取引の材料にする!」
フェートン号はオランダ商館員1名を解放した。
人質1名と引き換えに、まずは飲料水を確保したのである。
――さらに艦長の指示で“フェートン号”は、長崎奉行所を恫喝した。
奉行所に伝達された内容は、概ねこのように挑発的だった。
「飲料水をもっと出せ!充分な食料!肉も必要だ!もし応じなければ、港の船どもを焼き払う!」
冷静な長崎奉行・松平康英もこれには激昂した。
「何たる屈辱!佐賀の…鍋島の兵力さえあれば、数では圧倒できたものを…」
怒りに震える奉行を部下たちは不安げに見つめた。
「商館員の無事の帰還が第一」
オランダ商館長との約束がある。
長崎港内には、多数の和船や唐船もあり、長崎奉行所はそれらも守らねばならなかった。
フェートン号の要求には、応じるほかなかった。
他に手立てもなく、奉行所は飲料水、食料を用意した。
肉については、オランダ商館から家畜を提供してもらった。
本来ならば、無法な異国船の要求を蹴りたかった長崎奉行。
オランダ商館長との約束、長崎港内の船の安全のため、苦渋の決断で要求に応じた。
結果、2人目の商館員も無事に解放された。
(続く)