2020年01月24日
第1話「長崎警護」⑥-3
こんばんは。
昨日の続き。75分中、50分ほど経過したイメージです。
ここからは、佐賀藩が中心の話になっていきます。
第1話のエピソードは1808年のフェートン号事件を題材としています。浦賀にペリーの黒船が来航して、日本中が大騒ぎになる45年前の出来事です。
――長崎奉行はフェートン号事件について、幕府への報告を行った。
信頼できる部下に後事を託し、長崎奉行・松平康英は責任を取って切腹した。
オランダ商館員2名を救出し、港の船にも被害が出ないよう奮闘した長崎奉行。しかし、国の表玄関で、幕府が異国船の横暴を止められなかった事実は重かった。
「佐賀の鍋島家、異国抑えのお役目を怠ること、極めて不届き…」
遺書には、長崎警護の人数を大幅に削減していた佐賀藩が名指しで非難されていた。
――幕府から佐賀藩に厳しい処分が行われる。
佐賀藩主・鍋島斉直には百日の閉門が命じられた。
異例の厳しい処分で、一切の外部との交流を絶たれた佐賀藩主。
――そして、長崎警備に関係する家老にはさらなる厳罰が下った。

若侍と上役(家老)が最後の会話をしている。
「おいたわしい…まさか、このような御沙汰が…。」
「致し方ない。儂はお役目を果たせなかったのだからな。」
「長崎から兵を引いたのは、ご家老ではありません!」
「…めったなことを申すな。責を負うべきは儂だ。」
「そうじゃ。この前話していたお主の縁談だが。」
「このようなときに、何をおっしゃいますか…!」
若侍は涙目である。
「うちの娘はどうか、と考えておった。」
「…何をおっしゃいますか!?」
若侍は、非常にわかりやすい困惑を示した。
「お前はとことん鈍いやつじゃな。それでは出世は縁遠いのう。」
「しかし家柄がまったく釣り合いませぬ。」
「近いうちに、身分ばかりを気にする世ではなくなるだろう。」
上役は、未来を見通すかのように少し遠い目をした。
「お主のように蘭学に明るい者は、今後見込みがあると考えておるぞ。いろいろ気にかけてやってくれ。」
「義父上っ!」
「…調子のよい奴め。まぁ一度はそう呼ばれてみたかった。これで満足じゃ。」
上役(家老)は、白装束を身に着けている。
それは今生の別れを意味した。
妻子との最後の別れへと向かう、上役の白い背中を見ていた。
若侍は、得体の知れない怒りを感じ、右拳を握りしめていた…
「おのれ、無法な異国船は、ことごとく私が沈めてやる!」
謹慎の意を示すため、城下では祭事や鳴り物の禁止が厳命された。武士も町衆も息をひそめて暮らす。
佐賀の城下は灯が消えたような有様となり、正月を迎えても静まりかえっていた。
(続く)
昨日の続き。75分中、50分ほど経過したイメージです。
ここからは、佐賀藩が中心の話になっていきます。
第1話のエピソードは1808年のフェートン号事件を題材としています。浦賀にペリーの黒船が来航して、日本中が大騒ぎになる45年前の出来事です。
――長崎奉行はフェートン号事件について、幕府への報告を行った。
信頼できる部下に後事を託し、長崎奉行・松平康英は責任を取って切腹した。
オランダ商館員2名を救出し、港の船にも被害が出ないよう奮闘した長崎奉行。しかし、国の表玄関で、幕府が異国船の横暴を止められなかった事実は重かった。
「佐賀の鍋島家、異国抑えのお役目を怠ること、極めて不届き…」
遺書には、長崎警護の人数を大幅に削減していた佐賀藩が名指しで非難されていた。
――幕府から佐賀藩に厳しい処分が行われる。
佐賀藩主・鍋島斉直には百日の閉門が命じられた。
異例の厳しい処分で、一切の外部との交流を絶たれた佐賀藩主。
――そして、長崎警備に関係する家老にはさらなる厳罰が下った。

若侍と上役(家老)が最後の会話をしている。
「おいたわしい…まさか、このような御沙汰が…。」
「致し方ない。儂はお役目を果たせなかったのだからな。」
「長崎から兵を引いたのは、ご家老ではありません!」
「…めったなことを申すな。責を負うべきは儂だ。」
「そうじゃ。この前話していたお主の縁談だが。」
「このようなときに、何をおっしゃいますか…!」
若侍は涙目である。
「うちの娘はどうか、と考えておった。」
「…何をおっしゃいますか!?」
若侍は、非常にわかりやすい困惑を示した。
「お前はとことん鈍いやつじゃな。それでは出世は縁遠いのう。」
「しかし家柄がまったく釣り合いませぬ。」
「近いうちに、身分ばかりを気にする世ではなくなるだろう。」
上役は、未来を見通すかのように少し遠い目をした。
「お主のように蘭学に明るい者は、今後見込みがあると考えておるぞ。いろいろ気にかけてやってくれ。」
「義父上っ!」
「…調子のよい奴め。まぁ一度はそう呼ばれてみたかった。これで満足じゃ。」
上役(家老)は、白装束を身に着けている。
それは今生の別れを意味した。
妻子との最後の別れへと向かう、上役の白い背中を見ていた。
若侍は、得体の知れない怒りを感じ、右拳を握りしめていた…
「おのれ、無法な異国船は、ことごとく私が沈めてやる!」
謹慎の意を示すため、城下では祭事や鳴り物の禁止が厳命された。武士も町衆も息をひそめて暮らす。
佐賀の城下は灯が消えたような有様となり、正月を迎えても静まりかえっていた。
(続く)