2020年11月28日

連続ブログ小説「旅立の剣」(14)限りなき“母の愛”

こんばんは。

佐賀版「幕末男子の育て方」が、体感できる場所。昨秋大隈重信記念館に行ったときの記憶をたどっています。

幼い大隈重信八太郎)は、人より成長が遅く、超甘えん坊だったと言います。

三井子は、神仏に祈り、物語を読み聞かせ友達を大事にします。今年、流行りの言葉なら“全集中”で子育てをしたでしょう。


――大隈重信八太郎)は、4人きょうだいの3番目で、長男。

信保は、佐賀藩の“砲術長”で、物理(弾道計算)や化学(火薬調合)に長じたと聞くが、その人となりを知る資料の持ち合わせは無い。

しかし、佐賀黒船来航前に国産初鉄製大砲を完成するほど進んだ雄藩大隈役職に見合う、才覚が伴った人物と見るのが自然だろう。

そして、地元で“女丈夫”と言われる元気な三井子八太郎には、2人。後にが生まれ、2女2男の4人姉弟となる。


――時刻は16時頃。穏やかな雨は続く。縁側から灯りが見える。

ほう…
リアルな武家屋敷。しかも大隈先生の生家。私は感嘆した。

現地への取材と並行し、図書も調べた私には、予備知識があった。三井子と長男・八太郎母子のエピソードは、なかなか「面白い」のだ。



――元気なだけでなく、キャラクターの強い母・三井子。

甘えん坊我が子に困ったは、八太郎くんに勇敢な軍記物語(『太平記』など)を読み聞かせたという。

そして、今度は喧嘩ばかりするようになった八太郎くんに、“念仏“を10回唱えて、「それでも腹が立つ時にだけ」喧嘩するように諭す。

八太郎くんが成長して、学びを深め、友達との議論に熱中すれば、家計を切り詰めてでも、友人たち食事菓子を振る舞う。


――後に大隈侯は「自分は家に恵まれていた」と語ったという。

秋雨には少し肌寒さを感じつつも、大隈家灯りは私の心を温かくした。

名だたる佐賀の賢人たちの“溜まり場”だった大隈八太郎重信)の新時代を築く知恵が培われた…とも言えるこの場所

まるで「“明治の礎を築く”若者たち」を優しく見守る、佐賀の母大隈三井子の視点でも「幕末佐賀大河ドラマ」は描けるかも…そんな感想を持った。


(続く)

〔参照記事:第5話「藩校立志」①
佐賀藩士たちが、尊王の象徴と崇めていたのが、“楠木正成”。軍記物語『太平記』に描かれた、その活躍を三井子八太郎くんに読んで聞かせる場面です。“本編”中、さらに「歴史ドラマ」を入れるという構成で、勢いのままに書いたお話です。