2020年11月09日

連続ブログ小説「旅立の剣」(6)ささやかな幸福

こんばんは。
幕末佐賀藩大河ドラマで見たい!」と発心した私。昨秋佐賀での取材を開始した頃の話です。

私の周りに「なんと無意味なことを!」と言う人はいませんでした。ただ、呆気に取られていただけ…という可能性は残ります。

最初の目的地は“佐野常民記念館”。屋外は降りしきる。他に来館者の姿はなく、私のためだけに“みえつドームシアター”の上映が始まります。


――船底から煽るように見上げる、大型の艦船。

長さ45.5メートルの船体がリアルに迫ってくる。
映し出されるのは、佐賀藩海軍の主力艦・“電流丸”。

電流丸”は、佐賀藩オランダから購入した蒸気船アメリカに渡った幕府の“咸臨丸”と同じく、スクリュー推進式の新鋭艦だった。


――空を舞う、鳥の目も用いて“電流丸”を眺める。

有明海干満の差を利用して船を曳き込み、整備を行う“ドライドック”の紹介。西洋技術だけでなく、日本古来工法も活きているのが渋い

佐賀藩は、国産初の実用蒸気船凌風丸”を建造した。有明の海を駆け回った小型蒸気船蒸気機関修繕自力で行えるのが、佐賀強みだった。



――この映像が見られるだけでも、ここまで来た甲斐はあった…

ささやかな幸福感に浸る私に吉報が続く。
止んだみたいですよ。」

風雨は治まり、曇り空が広がる。
私は「見えない世界遺産」“三重津海軍所跡”を見聞する機会を得た。


(続く)

〔関連記事(後半):「主に伊万里市民の方を対象にしたつぶやき」