2021年05月07日
連続ブログ小説「旅立の剣」(39)走らんね!
こんばんは。
突如、始まった壇上からの“餅まき”。私は佐賀の青天を見上げます。
2019年(令和元年)10月の昼下がり。
とても佐賀らしい、ある“号令”が響いて、私は走り始めました。
――14:10。壇上、そして会場を包む拍手。
たぶん中身は“佐賀銘菓”だと思うが、“餅”投げは完了した様子。
西の堀端に漂うのは、まるで“大団円”の雰囲気。
私は“餅”キャッチには手出ししなかったが、幸福感は受け取った。
――ここでМCの女性の声。
橋の上から右手後方に見える、堀の際(きわ)をご覧いただきたいらしい。
「葉隠…砲術隊だと!?」
私は驚愕した。見た感じ“アームストロング砲”が用意されている。
このお祭りは、どこまで幕末の佐賀藩を詰め込んでくるのだ。

――「祝砲で~す!」何ともトーンが明るい。楽しくなる声だ。
パァン…!
堀端に響き渡る大音声。たなびく白煙…
「幕末、佐賀ほどモダンな藩は無かった」と聞く。
ある歴史小説の大作家の先生が、そう語ったようだ。定番の小説も読みたい。でも、なるべく私自身の想いで佐賀藩を語ってみたい。しばらくは、我慢しよう。
――14:12。別れの時が迫る。
まさに「後ろ髪をひかれる」とはこの事。しかし、もう時間の猶予は無い。
「急ぎ、佐賀駅まで戻れ!」
運動会みたいに言うが、先ほどの“祝砲”はスタートの合図だったのか。
――まず、荷物が揺れぬよう、しっかり背に付ける。
おそらくはイベントの余韻(よいん)に浸る、近隣からの来場者の皆様。
「私も本当は、もう少しここに居たい…」
そして2度、3度と名残惜しく振り返ったうえで、帰路へと走り始めた。

――移動を開始してから、3~4分ばかり経過。
「おおっ!意外にまだ動けるじゃないか。」
…とは言え、スタート直後。しかも、周囲に人が居るので小走り程度だ。
先ほどの砲術隊の方が見える。こんなところにも佐賀藩士。
「写真を撮らせていただいても良いですか?」
急いでいても、これは撮影したい。周囲の子どもたちも楽し気である。
――何だか、すでに「大河ドラマ」の気配がする。
佐賀藩の誇る、精鋭っぽい“砲術隊”のお兄さん。スッ…と、刀を構える手元にも“砲術侍”の心意気を感じる。
「ありがとうございます!」
嬉しかった。旅の終わりまで、同僚(?)の佐賀藩士が見送ってくれたのだから。

――ほどなく祭りの中心から離れ、周囲の人通りは少なくなった。
移動時間の不足を見越して、撤収に選んだ西の堀端ルート。
私も佐賀藩士(?)を名乗るなら、周到に計画を進めたい。
…このくだり。たぶん、この旅を最初からご覧の方は苦笑するだろう。
勢いはあったが、行き当たりばったりと言うべき旅だったのだから。
――どうやら私は、まだ走れる。
佐賀駅に定刻にたどり着くため…?バスに乗り遅れるから…?
それもある。でも走りたいから走るのだ。
「走らんね!」心がそう叫ぶのだ。
そして、気持ちだけは若かったが、日頃の運動不足もある。
5分と持たずに息切れをしたが、距離だけは稼いで、北の堀端に出た。
(続く)
突如、始まった壇上からの“餅まき”。私は佐賀の青天を見上げます。
2019年(令和元年)10月の昼下がり。
とても佐賀らしい、ある“号令”が響いて、私は走り始めました。
――14:10。壇上、そして会場を包む拍手。
たぶん中身は“佐賀銘菓”だと思うが、“餅”投げは完了した様子。
西の堀端に漂うのは、まるで“大団円”の雰囲気。
私は“餅”キャッチには手出ししなかったが、幸福感は受け取った。
――ここでМCの女性の声。
橋の上から右手後方に見える、堀の際(きわ)をご覧いただきたいらしい。
「葉隠…砲術隊だと!?」
私は驚愕した。見た感じ“アームストロング砲”が用意されている。
このお祭りは、どこまで幕末の佐賀藩を詰め込んでくるのだ。
――「祝砲で~す!」何ともトーンが明るい。楽しくなる声だ。
パァン…!
堀端に響き渡る大音声。たなびく白煙…
「幕末、佐賀ほどモダンな藩は無かった」と聞く。
ある歴史小説の大作家の先生が、そう語ったようだ。定番の小説も読みたい。でも、なるべく私自身の想いで佐賀藩を語ってみたい。しばらくは、我慢しよう。
――14:12。別れの時が迫る。
まさに「後ろ髪をひかれる」とはこの事。しかし、もう時間の猶予は無い。
「急ぎ、佐賀駅まで戻れ!」
運動会みたいに言うが、先ほどの“祝砲”はスタートの合図だったのか。
――まず、荷物が揺れぬよう、しっかり背に付ける。
おそらくはイベントの余韻(よいん)に浸る、近隣からの来場者の皆様。
「私も本当は、もう少しここに居たい…」
そして2度、3度と名残惜しく振り返ったうえで、帰路へと走り始めた。
――移動を開始してから、3~4分ばかり経過。
「おおっ!意外にまだ動けるじゃないか。」
…とは言え、スタート直後。しかも、周囲に人が居るので小走り程度だ。
先ほどの砲術隊の方が見える。こんなところにも佐賀藩士。
「写真を撮らせていただいても良いですか?」
急いでいても、これは撮影したい。周囲の子どもたちも楽し気である。
――何だか、すでに「大河ドラマ」の気配がする。
佐賀藩の誇る、精鋭っぽい“砲術隊”のお兄さん。スッ…と、刀を構える手元にも“砲術侍”の心意気を感じる。
「ありがとうございます!」
嬉しかった。旅の終わりまで、同僚(?)の佐賀藩士が見送ってくれたのだから。
――ほどなく祭りの中心から離れ、周囲の人通りは少なくなった。
移動時間の不足を見越して、撤収に選んだ西の堀端ルート。
私も佐賀藩士(?)を名乗るなら、周到に計画を進めたい。
…このくだり。たぶん、この旅を最初からご覧の方は苦笑するだろう。
勢いはあったが、行き当たりばったりと言うべき旅だったのだから。
――どうやら私は、まだ走れる。
佐賀駅に定刻にたどり着くため…?バスに乗り遅れるから…?
それもある。でも走りたいから走るのだ。
「走らんね!」心がそう叫ぶのだ。
そして、気持ちだけは若かったが、日頃の運動不足もある。
5分と持たずに息切れをしたが、距離だけは稼いで、北の堀端に出た。
(続く)
タグ :佐賀
2021年05月05日
連続ブログ小説「旅立の剣」(38)肥前の品格
こんにちは。
佐賀城の西の堀端。前回は歴史寸劇「さがんもん」に衝撃を受けた私。青空のもと、道路を封鎖してのイベントは続きます。
ちなみに2019年10月の話です。現状では、同じ形でのイベント開催は難しいでしょう。この時、私の心を打ったのは、佐賀の人混みに感じる“品性”でした。
――13:50。私が、この場に居られる残り時間は30分。
再び、幕末の風が漂うBGM。気になる方は、前回記事から参照してほしい。
「さが維新まつり」と白地に墨書した大旗がはためき、進んで来る。その隊列を出迎える、来場者たちが青い小旗を振る。
私は“お祭り男”の類では無いが、この盛り上がりには心が躍るものがある。
「こういう祭りには、もう少し早く出会いたかった…」

※公道でのイベントで当時の映像も公開されていますが、掲載写真はなるべく加工しています。
――この祭りのパレードを一言でいえば、幕末・明治期の仮装行列である。
演劇を中心に活動する「幕末・維新 佐賀の八賢人おもてなし隊」の方々だけでなく、一般で公募された方も佐賀の偉人に扮している。
その数分前には「おもてなし隊」のキャストの方は、全員集結していた。舞台上には前回のメンバー5人。加えて“別動隊”だった3人も到着したようだ。

注)2019年10月時点のキャストの皆様。私は「おもてなし隊」の関係者ではないため、一ファンとして紹介しています。説明の文章などは、歴史上の人物に対しての私個人の見解です。
――合流した3人は、舞台の下側。
右から順に、マイクの前に居る洋装の方、日本赤十字社創設・佐野常民。
横顔のお侍が、人道的な外交で近代国家としての日本を示した副島種臣。
左端。早稲田大学を創った人。初の政党内閣での総理大臣・大隈重信。
発した言葉は「令和に生きる“後輩”を見ている」旨のメッセージだ。
「大隈先生、確かに受け取りましたよ。」と言葉を返す気分。但し、受け取った私には、それなりに険しい道が待っているような気もする。
――そんな折、突然に明治政府の“外交官”が近くを通りがかる。
殿・鍋島直正のご子息、鍋島直大さまだ。
佐賀県内では、幼少期に“種痘”を施される絵図で有名。
のちにイタリア公使としても活躍。海外駐在の長い国際派だ。
…というプロフィールだが、直大さまに扮した方を見た。
「この人、佐賀県の知事だ!」

――県民各位には、“賛否両論”あろうが…
私は県知事の姿に気付く。密かに舞台へ進む様子。一方で沿道は、その外交官・鍋島直大の夫人、鍋島榮子(ながこ)さまの登場に大盛り上がりを見せる。
扮するのは、女優の中越典子さん。当時のドレスを纏い、貴婦人の出で立ち。佐賀の出身とは聞いていたが、さすが芸能人。オーラが違うし、とても小顔だ。
…昔は、佐賀駅のミスタードーナツにも来ていたとか聞くが、信じ難い。
――14:00。山口知事と、中越さんが登壇している。
あまりの展開に入ってくる情報量が多過ぎて、少々混乱気味の私。舞台上ではMCの女性が華のある高い声で、テキパキと話を整理している。
ふと、冷静になる。もう、私は帰路に付かねば。会場では“餅まき”のような行事が始まっていた。
おそらく飛び交うのは袋入りの“佐賀銘菓”。キャッキャと楽しそうな子供たち。

――“この会場”との、別れの寂しさが過(よ)ぎる。
子のためか自分のためか、頭上の青空に向けて高く手を伸ばす大人たち。皆が「この青天に向かって、“掌”を突き上げている!」のだ。
「“いつも”とは何かが、違う…」
私は考えた。もし、大都市圏で同じように人が集まれば、ゴチャゴチャと無秩序になるのが常だ。この会場に集う佐賀の人たちからは、そんな気配を感じない。
「これも肥前の…、佐賀の品格か。」
旅の終わりにも、私は奇妙な気付きを得ていた。
(続く)
佐賀城の西の堀端。前回は歴史寸劇「さがんもん」に衝撃を受けた私。青空のもと、道路を封鎖してのイベントは続きます。
ちなみに2019年10月の話です。現状では、同じ形でのイベント開催は難しいでしょう。この時、私の心を打ったのは、佐賀の人混みに感じる“品性”でした。
――13:50。私が、この場に居られる残り時間は30分。
再び、幕末の風が漂うBGM。気になる方は、前回記事から参照してほしい。
「さが維新まつり」と白地に墨書した大旗がはためき、進んで来る。その隊列を出迎える、来場者たちが青い小旗を振る。
私は“お祭り男”の類では無いが、この盛り上がりには心が躍るものがある。
「こういう祭りには、もう少し早く出会いたかった…」
※公道でのイベントで当時の映像も公開されていますが、掲載写真はなるべく加工しています。
――この祭りのパレードを一言でいえば、幕末・明治期の仮装行列である。
演劇を中心に活動する「幕末・維新 佐賀の八賢人おもてなし隊」の方々だけでなく、一般で公募された方も佐賀の偉人に扮している。
その数分前には「おもてなし隊」のキャストの方は、全員集結していた。舞台上には前回のメンバー5人。加えて“別動隊”だった3人も到着したようだ。
注)2019年10月時点のキャストの皆様。私は「おもてなし隊」の関係者ではないため、一ファンとして紹介しています。説明の文章などは、歴史上の人物に対しての私個人の見解です。
――合流した3人は、舞台の下側。
右から順に、マイクの前に居る洋装の方、日本赤十字社創設・佐野常民。
横顔のお侍が、人道的な外交で近代国家としての日本を示した副島種臣。
左端。早稲田大学を創った人。初の政党内閣での総理大臣・大隈重信。
発した言葉は「令和に生きる“後輩”を見ている」旨のメッセージだ。
「大隈先生、確かに受け取りましたよ。」と言葉を返す気分。但し、受け取った私には、それなりに険しい道が待っているような気もする。
――そんな折、突然に明治政府の“外交官”が近くを通りがかる。
殿・鍋島直正のご子息、鍋島直大さまだ。
佐賀県内では、幼少期に“種痘”を施される絵図で有名。
のちにイタリア公使としても活躍。海外駐在の長い国際派だ。
…というプロフィールだが、直大さまに扮した方を見た。
「この人、佐賀県の知事だ!」
――県民各位には、“賛否両論”あろうが…
私は県知事の姿に気付く。密かに舞台へ進む様子。一方で沿道は、その外交官・鍋島直大の夫人、鍋島榮子(ながこ)さまの登場に大盛り上がりを見せる。
扮するのは、女優の中越典子さん。当時のドレスを纏い、貴婦人の出で立ち。佐賀の出身とは聞いていたが、さすが芸能人。オーラが違うし、とても小顔だ。
…昔は、佐賀駅のミスタードーナツにも来ていたとか聞くが、信じ難い。
――14:00。山口知事と、中越さんが登壇している。
あまりの展開に入ってくる情報量が多過ぎて、少々混乱気味の私。舞台上ではMCの女性が華のある高い声で、テキパキと話を整理している。
ふと、冷静になる。もう、私は帰路に付かねば。会場では“餅まき”のような行事が始まっていた。
おそらく飛び交うのは袋入りの“佐賀銘菓”。キャッキャと楽しそうな子供たち。
――“この会場”との、別れの寂しさが過(よ)ぎる。
子のためか自分のためか、頭上の青空に向けて高く手を伸ばす大人たち。皆が「この青天に向かって、“掌”を突き上げている!」のだ。
「“いつも”とは何かが、違う…」
私は考えた。もし、大都市圏で同じように人が集まれば、ゴチャゴチャと無秩序になるのが常だ。この会場に集う佐賀の人たちからは、そんな気配を感じない。
「これも肥前の…、佐賀の品格か。」
旅の終わりにも、私は奇妙な気付きを得ていた。
(続く)
2021年05月03日
連続ブログ小説「旅立の剣」(37)佐賀の者の誇り
こんばんは。
2019年10月19日。私は「第2回さが維新まつり」の真っ只中にいました。
イベントも演劇も、おそらくは一期一会のもの。私は「この時、この場所」でしか見られないものを見たのだと思います。
いまや、人が密集した行事には注意を払わねばなりません。しかし「新しい佐賀のお祭り」は、時代にあわせて進化してくれると信じています。
――13:05。通行止めとなった路上で、次の展開を待つ私。
テーマソングらしき音楽。幕末の風を感じるBGMが、再び力強く響き始めた。
~♪~ さが維新まつり(https://saga-ishinmatsuri.jp/)※外部サイト
(同ページの「ダイジェスト版映像」のBGMと思われます。)
そして道路の向こう側から、さざ波のように歓声が伝わり始める。
「誰かが、こちらに進んで来ている…」

※一般の方も写っているため、画像を強めに加工しています。
――いや、厳密に言えば、「何かが向かってきている。」
路上を水平移動する台車。パレード等で使われる“フロート”というものらしい。“舞台”がそのまま、こちらに移動して来るのだ。
私がこの場にいる理由は、歴史寸劇の鑑賞だ。そのため、どなたが乗っているのかは予想できている。
――「いま、会いに行ける殿。」
まるでアイドルグループの歌い文句のようだが、私はそんな感覚で捉えている。
郷土が誇る佐賀の賢人たちも書物や銅像で仰ぎ見るだけでは、きっと存在感は現代に発揮されない。身近に感じることが次につながると思うのだ。
目標になる“先輩”の存在は、たぶん現代を生きる“後輩たち”の行動も変えていく。きっと、この方々の活動には、そのような力もある。

――そして、目の前を滑るように、通過する“先輩”方。
青い旗を振る来場者。私も振りたかったが、その小道具の入手先を知らない。
公家のような装束を纏う、明治期の新政府でも要人となった、殿・鍋島直正。
黒の紋付に白袴の姿が、北海道の開拓を進め、札幌を創った男・島義勇。
…と、ざっくり説明を試みる。

※2019年10月時点のキャストの方々です。
――13:15。「佐賀の“八賢人”」のうち、五名が揃う。
先輩たちの集結。現在の私なら、大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の“柱”が集合したのに、近いイメージと考える。
ちなみに真ん中が、日本の近代司法を築いた、江藤新平。その右隣が、義務教育制度を形作っていった、大木喬任。
右端は、この2人をはじめ、新時代を拓いた多くの人材たちの師匠・枝吉神陽。
「佐賀の七賢人」に、この先生を加えると“八賢人”になる。
――13:30頃。私を含め、来場者はじっと前を向いていた。
“幕末・維新 佐賀の八賢人おもてなし隊”による、歴史劇「さがんもん」が上演されている。
教科書では、初期の“士族反乱”として「佐賀の乱」と習った。私が佐賀出身者として、聞くだけで残念な気持ちになるNGワード。
近年では、当時の政府が攻撃に積極的で、佐賀方はやむを得ず応戦したとの解釈もある。反乱とは言い難いので「佐賀戦争」と呼称すべきという主張だ。

――舞台設定は、1874年(明治七年)。
敗色が濃厚となった佐賀城内。江藤新平と、島義勇との最後の対話が演目となっているようだ。
史実では、この2人は政治的には立場が異なるものの「郷土を防衛するため」と共闘していたと聞く。
ここで島義勇が語るのは、北海道開拓の思い出話。
屋外の会場。私を含む聴衆たちは皆、青い空のもとにいる。嬉々として札幌の事を語る、島が見遣る先には、北の大地が広がるようだった。
――頭上の空の青さが、何だか切ないほどだ。
諦めの言葉を口にする江藤。島は先輩らしく、その弱気を叱咤(しった)する。
自身が信じてきた正義を想い、熱い気持ちを取り戻す江藤。
江藤、そして島が“生きるために”敵陣に向かう姿で、劇は終幕となった。

――そこに、殿・鍋島直正の“天の声”。
「…思えば、この2人は、生粋のさがんもん(佐賀の者)じゃった…」
抑えたナレーションが、心に響く。これも涙腺に来る展開だ。先ほどから、普段のドライアイを忘れるほど、私の瞳は潤っている。
そしてこの瞬間が、この旅の目的地だったのかもしれない。
(続く)
〔参考記事(題材が同一):「“さが維新まつり”について」〕
2019年10月19日。私は「第2回さが維新まつり」の真っ只中にいました。
イベントも演劇も、おそらくは一期一会のもの。私は「この時、この場所」でしか見られないものを見たのだと思います。
いまや、人が密集した行事には注意を払わねばなりません。しかし「新しい佐賀のお祭り」は、時代にあわせて進化してくれると信じています。
――13:05。通行止めとなった路上で、次の展開を待つ私。
テーマソングらしき音楽。幕末の風を感じるBGMが、再び力強く響き始めた。
~♪~ さが維新まつり(https://saga-ishinmatsuri.jp/)※外部サイト
(同ページの「ダイジェスト版映像」のBGMと思われます。)
そして道路の向こう側から、さざ波のように歓声が伝わり始める。
「誰かが、こちらに進んで来ている…」
※一般の方も写っているため、画像を強めに加工しています。
――いや、厳密に言えば、「何かが向かってきている。」
路上を水平移動する台車。パレード等で使われる“フロート”というものらしい。“舞台”がそのまま、こちらに移動して来るのだ。
私がこの場にいる理由は、歴史寸劇の鑑賞だ。そのため、どなたが乗っているのかは予想できている。
――「いま、会いに行ける殿。」
まるでアイドルグループの歌い文句のようだが、私はそんな感覚で捉えている。
郷土が誇る佐賀の賢人たちも書物や銅像で仰ぎ見るだけでは、きっと存在感は現代に発揮されない。身近に感じることが次につながると思うのだ。
目標になる“先輩”の存在は、たぶん現代を生きる“後輩たち”の行動も変えていく。きっと、この方々の活動には、そのような力もある。
――そして、目の前を滑るように、通過する“先輩”方。
青い旗を振る来場者。私も振りたかったが、その小道具の入手先を知らない。
公家のような装束を纏う、明治期の新政府でも要人となった、殿・鍋島直正。
黒の紋付に白袴の姿が、北海道の開拓を進め、札幌を創った男・島義勇。
…と、ざっくり説明を試みる。
※2019年10月時点のキャストの方々です。
――13:15。「佐賀の“八賢人”」のうち、五名が揃う。
先輩たちの集結。現在の私なら、大ヒットアニメ「鬼滅の刃」の“柱”が集合したのに、近いイメージと考える。
ちなみに真ん中が、日本の近代司法を築いた、江藤新平。その右隣が、義務教育制度を形作っていった、大木喬任。
右端は、この2人をはじめ、新時代を拓いた多くの人材たちの師匠・枝吉神陽。
「佐賀の七賢人」に、この先生を加えると“八賢人”になる。
――13:30頃。私を含め、来場者はじっと前を向いていた。
“幕末・維新 佐賀の八賢人おもてなし隊”による、歴史劇「さがんもん」が上演されている。
教科書では、初期の“士族反乱”として「佐賀の乱」と習った。私が佐賀出身者として、聞くだけで残念な気持ちになるNGワード。
近年では、当時の政府が攻撃に積極的で、佐賀方はやむを得ず応戦したとの解釈もある。反乱とは言い難いので「佐賀戦争」と呼称すべきという主張だ。
――舞台設定は、1874年(明治七年)。
敗色が濃厚となった佐賀城内。江藤新平と、島義勇との最後の対話が演目となっているようだ。
史実では、この2人は政治的には立場が異なるものの「郷土を防衛するため」と共闘していたと聞く。
ここで島義勇が語るのは、北海道開拓の思い出話。
屋外の会場。私を含む聴衆たちは皆、青い空のもとにいる。嬉々として札幌の事を語る、島が見遣る先には、北の大地が広がるようだった。
――頭上の空の青さが、何だか切ないほどだ。
諦めの言葉を口にする江藤。島は先輩らしく、その弱気を叱咤(しった)する。
自身が信じてきた正義を想い、熱い気持ちを取り戻す江藤。
江藤、そして島が“生きるために”敵陣に向かう姿で、劇は終幕となった。

――そこに、殿・鍋島直正の“天の声”。
「…思えば、この2人は、生粋のさがんもん(佐賀の者)じゃった…」
抑えたナレーションが、心に響く。これも涙腺に来る展開だ。先ほどから、普段のドライアイを忘れるほど、私の瞳は潤っている。
そしてこの瞬間が、この旅の目的地だったのかもしれない。
(続く)
〔参考記事(題材が同一):
2021年05月02日
「“地域ブログ”で語ること。」
こんばんは。
2019年12月より「幕末佐賀藩の“大河ドラマ”を見たい!」という想いを軸に書き続けています。
そして、これは想定外だったのですが、ブログ開始時からは一度も佐賀に帰れていません。
最近、「旅立の剣」というシリーズでも、私の現地調査の様子を書いています。本来なら、もっと佐賀で活動を展開するつもりだったのです。
幕末・明治期に詳しい方への取材、単に「佐賀の大河ドラマを見たい」だけの“同志”とも語る機会を持ちながら進めたい!と漠然と想っていました。
――先日、投稿記事数が350本になったと表示がありました。
まるで佐賀藩の蒸気機関のように語りますが、当ブログでは、私の仕事等により生じたストレスを主な燃料として書き進めています。
文章に息苦しさを感じる場合は、燃料の質が低下しているのかもしれません。
もっとも、最近は…と言えば
・コロナ禍で佐賀に帰れないので、「望郷の想い」を語るとか
・テレビ(アニメ)やスーパー(物産展)で見かける佐賀の事とか
…やや、疲れ気味なのは否めないところです。

――そして、肝心の“大河ドラマ”のイメージ(本編)が進んでいません。
“本編”は、第1部・幕末黎明編(~第15話)で休止しています。
「桜田門外の変」直後の混沌とした状況で、次話の再開待ちです。
〔参照:第15話「江戸動乱」⑯(殿を守れ!)〕
当初は、もう少し“第1部”を続ける予定でした。今では、第2部・維新回天編(第16話~)開始として、仕切り直そうと考えています。
しかし、続いて設定した第16話「攘夷沸騰」と第17話「佐賀脱藩」が、かなりの難関でして、構成に迷う要素ばかりです。
・資料ごとに、筆者の結論(事件の解釈、登場する関係者など)が異なる。
・登場人物が分散するうえ、どのエピソードが史実に近いのか判断しづらい。
――今日も、ある資料を読んでいて…
「あれっ!?確かこの方、この時期には既にお亡くなりのはずでは…」という問題まで出現しました。
最近、視聴しているアニメから…「あぁ、そうか!サガは“ゾンビランド”だから、命が尽きても、“志”があれば行動できるのか!」
…と、いかにも煮詰まった感じに結論が出ることもあります。
――ふと気付くと、累計アクセス数も30,000を超えて。
「さがファンブログ」でページを開設して、おそらく主にご覧いただいているのは、佐賀県内の皆様。“地域ブログ”でなければ、ここまで続いたかはわかりません。
“本編”第2部も近いうちに再開したいと思っていますが、私の情報収集能力では、正確な史実が掴みづらいところもあります。
「史実に着想を得たフィクション」という要素を強めにある程度、自由に描くことになりそうです。引き続き温かい眼差しで、お読みいただければ幸いです。
2019年12月より「幕末佐賀藩の“大河ドラマ”を見たい!」という想いを軸に書き続けています。
そして、これは想定外だったのですが、ブログ開始時からは一度も佐賀に帰れていません。
最近、「旅立の剣」というシリーズでも、私の現地調査の様子を書いています。本来なら、もっと佐賀で活動を展開するつもりだったのです。
幕末・明治期に詳しい方への取材、単に「佐賀の大河ドラマを見たい」だけの“同志”とも語る機会を持ちながら進めたい!と漠然と想っていました。
――先日、投稿記事数が350本になったと表示がありました。
まるで佐賀藩の蒸気機関のように語りますが、当ブログでは、私の仕事等により生じたストレスを主な燃料として書き進めています。
文章に息苦しさを感じる場合は、燃料の質が低下しているのかもしれません。
もっとも、最近は…と言えば
・コロナ禍で佐賀に帰れないので、「望郷の想い」を語るとか
・テレビ(アニメ)やスーパー(物産展)で見かける佐賀の事とか
…やや、疲れ気味なのは否めないところです。
――そして、肝心の“大河ドラマ”のイメージ(本編)が進んでいません。
“本編”は、第1部・幕末黎明編(~第15話)で休止しています。
「桜田門外の変」直後の混沌とした状況で、次話の再開待ちです。
〔参照:
当初は、もう少し“第1部”を続ける予定でした。今では、第2部・維新回天編(第16話~)開始として、仕切り直そうと考えています。
しかし、続いて設定した第16話「攘夷沸騰」と第17話「佐賀脱藩」が、かなりの難関でして、構成に迷う要素ばかりです。
・資料ごとに、筆者の結論(事件の解釈、登場する関係者など)が異なる。
・登場人物が分散するうえ、どのエピソードが史実に近いのか判断しづらい。
――今日も、ある資料を読んでいて…
「あれっ!?確かこの方、この時期には既にお亡くなりのはずでは…」という問題まで出現しました。
最近、視聴しているアニメから…「あぁ、そうか!サガは“ゾンビランド”だから、命が尽きても、“志”があれば行動できるのか!」
…と、いかにも煮詰まった感じに結論が出ることもあります。
――ふと気付くと、累計アクセス数も30,000を超えて。
「さがファンブログ」でページを開設して、おそらく主にご覧いただいているのは、佐賀県内の皆様。“地域ブログ”でなければ、ここまで続いたかはわかりません。
“本編”第2部も近いうちに再開したいと思っていますが、私の情報収集能力では、正確な史実が掴みづらいところもあります。
「史実に着想を得たフィクション」という要素を強めにある程度、自由に描くことになりそうです。引き続き温かい眼差しで、お読みいただければ幸いです。
2021年05月01日
「誰かが、誰かの“憧れの人”」
こんにちは。
佐賀になかなか帰れない状況もあり、最近楽しみにしているアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」。
ゾンビとは言え、話のベースは「アイドル系アニメ」。マジメに「王道のアイドル」を展開されると、年代的に私が付いて行くのは辛いところもあります。
――「私は感じねばならんのです!佐賀の風を…」
今までの放送では、画面からあふれる“佐賀”要素が、私に力を与えました。
例えば…
・“バルーン通り”から水路の巡る佐賀市内を疾走するプロデューサー(第1話)
・鹿島の祐徳稲荷でのTVロケ、伝説のロックシンガーの熱き佐賀推し(第2話)

※実際の場面は、写真とは別の場所です。
――でも、“伊万里焼”の飾ってある橋で、乱闘しちゃダメです…
ただ、これもアニメの場面設定としては面白かったです。元・暴走族のメンバー(2号)が生きていた時の回想シーンで出てきたと思います。
第3話では元・平成のトップアイドルだったメンバー(3号)が福岡・長崎・大分からイベントに誘われます。そんな有難い申出を、プロデューサーが全拒否!
その時のセリフが
「みんな、佐賀の栄光に嫉妬(しっと)しとるんじゃ~い!」とか。
――ここで爆笑する、テレビの前の私。
「快(かい)なり!!」
…あ、これは今年の大河ドラマで竹中直人さんが、機嫌の良い場面でよく言っていたセリフです。
「実際は、出演してあげた方が良いかな?福岡・長崎・大分のイベントなら…」と私まで、まさかの“上から目線”の気分に。恐るべし「ゾンビランドサガ」効果。
――作中には鳥栖市(田代)にある、あの会社の製品らしき湿布薬も…
アニメの中では、商品名は「サガンシップZ」になっています。
私は視聴できていませんが、第1シリーズから出ていたようですね。
きっと元ネタはこの銅像の方・中冨三郎さまが作った大ヒット商品。それにしても「佐賀の(ん)湿布(しっぷ)」とは…素晴らしいネーミング。
私も時折、お世話になる“サロンパス”。「たしかに“佐賀ん湿布”(さがんしっぷ)と呼んでも、意味合いとしては通るな…」と、考えるようになりました。

――第4話は“アイドルとしてのお話”全開だったため…
私個人としては、上記のような盛り上がり所を見つけられなかったのです。もし、熱心なファンの方が読んでいたら、申し訳ございません。
…公園とか海岸などのロケーションは、地元の方なら気付くのかも。もしくは、会場が「佐賀アリーナ」という設定で盛り上がるべきなのか…
――しかし、視聴後に1つ気付いたことが。
今回、話の中心は生前に昭和のトップアイドルだったメンバー(4号)。
終盤に吹っ切れてステージで暴れ、鮮烈なパフォーマンスを見せるのですが、途中までは“現代”でうまく立ち回れない姿が、自信なさげに描かれました。
ラストでは平成のアイドルだった3号が、昭和期の彼女(4号)が歌唱する映像を密かに視聴し、憧れていたような表現が見られます。
そして、作中でライバルとして登場した、現代(令和)のトップアイドル。彼女も、幼少期に平成のアイドルだった生前の3号に憧れていた…
――これは、意外に“得たもの”がある!
私とて、200~100年前を生きた佐賀の“先輩”たちの背中を追っています。
「…強くなりたい。あの人のように。」
佐賀の歴史を調べ始めて、そう思える“先輩”には、たびたび出会います。
いかに、その魅力が現代に伝わるように描くか。随分と努力が要りそうです。
佐賀になかなか帰れない状況もあり、最近楽しみにしているアニメ「ゾンビランドサガ リベンジ」。
ゾンビとは言え、話のベースは「アイドル系アニメ」。マジメに「王道のアイドル」を展開されると、年代的に私が付いて行くのは辛いところもあります。
――「私は感じねばならんのです!佐賀の風を…」
今までの放送では、画面からあふれる“佐賀”要素が、私に力を与えました。
例えば…
・“バルーン通り”から水路の巡る佐賀市内を疾走するプロデューサー(第1話)
・鹿島の祐徳稲荷でのTVロケ、伝説のロックシンガーの熱き佐賀推し(第2話)
※実際の場面は、写真とは別の場所です。
――でも、“伊万里焼”の飾ってある橋で、乱闘しちゃダメです…
ただ、これもアニメの場面設定としては面白かったです。元・暴走族のメンバー(2号)が生きていた時の回想シーンで出てきたと思います。
第3話では元・平成のトップアイドルだったメンバー(3号)が福岡・長崎・大分からイベントに誘われます。そんな有難い申出を、プロデューサーが全拒否!
その時のセリフが
「みんな、佐賀の栄光に嫉妬(しっと)しとるんじゃ~い!」とか。
――ここで爆笑する、テレビの前の私。
「快(かい)なり!!」
…あ、これは今年の大河ドラマで竹中直人さんが、機嫌の良い場面でよく言っていたセリフです。
「実際は、出演してあげた方が良いかな?福岡・長崎・大分のイベントなら…」と私まで、まさかの“上から目線”の気分に。恐るべし「ゾンビランドサガ」効果。
――作中には鳥栖市(田代)にある、あの会社の製品らしき湿布薬も…
アニメの中では、商品名は「サガンシップZ」になっています。
私は視聴できていませんが、第1シリーズから出ていたようですね。
きっと元ネタはこの銅像の方・中冨三郎さまが作った大ヒット商品。それにしても「佐賀の(ん)湿布(しっぷ)」とは…素晴らしいネーミング。
私も時折、お世話になる“サロンパス”。「たしかに“佐賀ん湿布”(さがんしっぷ)と呼んでも、意味合いとしては通るな…」と、考えるようになりました。
――第4話は“アイドルとしてのお話”全開だったため…
私個人としては、上記のような盛り上がり所を見つけられなかったのです。もし、熱心なファンの方が読んでいたら、申し訳ございません。
…公園とか海岸などのロケーションは、地元の方なら気付くのかも。もしくは、会場が「佐賀アリーナ」という設定で盛り上がるべきなのか…
――しかし、視聴後に1つ気付いたことが。
今回、話の中心は生前に昭和のトップアイドルだったメンバー(4号)。
終盤に吹っ切れてステージで暴れ、鮮烈なパフォーマンスを見せるのですが、途中までは“現代”でうまく立ち回れない姿が、自信なさげに描かれました。
ラストでは平成のアイドルだった3号が、昭和期の彼女(4号)が歌唱する映像を密かに視聴し、憧れていたような表現が見られます。
そして、作中でライバルとして登場した、現代(令和)のトップアイドル。彼女も、幼少期に平成のアイドルだった生前の3号に憧れていた…
――これは、意外に“得たもの”がある!
私とて、200~100年前を生きた佐賀の“先輩”たちの背中を追っています。
「…強くなりたい。あの人のように。」
佐賀の歴史を調べ始めて、そう思える“先輩”には、たびたび出会います。
いかに、その魅力が現代に伝わるように描くか。随分と努力が要りそうです。
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