2021年05月07日

連続ブログ小説「旅立の剣」(39)走らんね!

こんばんは。
突如、始まった壇上からの“餅まき”。私は佐賀青天を見上げます。

2019年(令和元年)10月の昼下がり。
とても佐賀らしい、ある“号令”が響いて、私は走り始めました


――14:10。壇上、そして会場を包む拍手。

たぶん中身は“佐賀銘菓”だと思うが、“餅”投げは完了した様子。
西の堀端に漂うのは、まるで“大団円”の雰囲気。

私は“餅”キャッチには手出ししなかったが、幸福感は受け取った。


――ここでМCの女性の声。

橋の上から右手後方に見える、堀の際(きわ)をご覧いただきたいらしい。

葉隠砲術隊だと!?」

私は驚愕した。見た感じ“アームストロング砲”が用意されている。
このお祭りは、どこまで幕末佐賀藩を詰め込んでくるのだ。



――「祝砲で~す!」何ともトーンが明るい。楽しくなる声だ。

パァン…!
堀端に響き渡る大音声。たなびく白煙

幕末佐賀ほどモダンな藩は無かった」と聞く。

ある歴史小説大作家の先生が、そう語ったようだ。定番の小説も読みたい。でも、なるべく私自身の想いで佐賀藩を語ってみたい。しばらくは、我慢しよう。


――14:12。別れの時が迫る。

まさに「後ろ髪をひかれる」とはこの事。しかし、もう時間の猶予は無い。

「急ぎ、佐賀駅まで戻れ!」
運動会みたいに言うが、先ほどの“祝砲”はスタートの合図だったのか。


――まず、荷物が揺れぬよう、しっかり背に付ける。

おそらくはイベントの余韻(よいん)に浸る、近隣からの来場者の皆様。

「私も本当は、もう少しここに居たい…」
そして2度、3度と名残惜しく振り返ったうえで、帰路へと走り始めた



――移動を開始してから、3~4分ばかり経過。

「おおっ!意外にまだ動けるじゃないか。」
…とは言え、スタート直後。しかも、周囲に人が居るので小走り程度だ。

先ほどの砲術隊の方が見える。こんなところにも佐賀藩士

写真を撮らせていただいても良いですか?」
急いでいても、これは撮影したい。周囲の子どもたちも楽し気である。


――何だか、すでに「大河ドラマ」の気配がする。

佐賀藩の誇る、精鋭っぽい“砲術隊”のお兄さん。スッ…と、構える手元にも“砲術侍”の心意気を感じる。

「ありがとうございます!」
嬉しかった。旅の終わりまで、同僚(?)の佐賀藩士が見送ってくれたのだから。



――ほどなく祭りの中心から離れ、周囲の人通りは少なくなった。

移動時間不足を見越して、撤収に選んだ西の堀端ルート
私も佐賀藩士(?)を名乗るなら、周到に計画を進めたい。

…このくだり。たぶん、この旅を最初からご覧の方は苦笑するだろう。
勢いはあったが、行き当たりばったりと言うべき旅だったのだから。


――どうやら私は、まだ走れる。

佐賀駅に定刻にたどり着くため…?バスに乗り遅れるから…?
それもある。でも走りたいから走るのだ。

走らんね!」心がそう叫ぶのだ。

そして、気持ちだけは若かったが、日頃の運動不足もある。
5分と持たずに息切れをしたが、距離だけは稼いで、北の堀端に出た。


(続く)

  
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