2020年08月29日

「異郷の剣」

こんばんは。
来週くらいまで第13話「通商条約」が続きそうなのですが、週末に入ったので、一息入れます。

なかなか故郷に帰ることが叶わない、ある佐賀藩士(?)のお話。これを「望郷の剣」シリーズと称しています。まったく歴史に関わらない、現代の小さな日常の話を“本編”のトーンのまま描きます。

今回は、同じ肥前国でありつつも、佐賀ではない…あえて“異郷”と表現した、長崎への複雑な想い(!)です。


――果たして、お1人でも覚えておられる方がいるだろうか。

私は「望郷の剣2」という投稿で、幾袋かの佐賀銘菓・“丸ぼうろ”を購入した。
〔参照:「望郷の剣2」

大袈裟に“脱藩”と形容しているが、私は容易に佐賀へと帰ることができない。そんな私に届けとばかり、眼前に“丸ぼうろ”が現れた話である。

先だって、その最後の1袋を完食した。
「しばしの別れだ。また相見(あいまみ)える、その日まで…」


――こうして、再び“丸ぼうろ”の無い日々を送る私。

断じて「ネットショッピングで買ったら?」などと指摘してはならない。
これは「望郷の剣」シリーズの“お約束”のようなものである。

そんな、ある日。
都市圏で活動を続ける私に、西国からの支援が届く。


――同じ“肥前国”ではあるが、その荷物の差出は長崎からだった。

長崎に住む親族が、送ってきた品。
それは、長崎某有名カステラ会社の詰め合わせである。

「…これは期待して良いのでは。」
佐賀藩貿易部門が、品物を検品を行うような心持ちで箱を開封した。

2箱に仕分けられた品の陣容は、以下である。

その1つは、をふっくらの生地で包む和風菓子“三笠山”
もう1つは、カステラを生地で巻いた洋風菓子“カステラ巻”


――長崎から来た菓子には“佐賀の品”をも超える要素がある。

それは、甘味の強さである。
「この菓子…“さがんもん”より、かなり甘い!」

昔から“砂糖”と言えば、長崎である。流石(さすが)はシュガーロードと称される“長崎街道”の起点。

甘さ”で余所に後れをとることは、おそらくは長崎の誇りが許さない。
「これが、長崎にとっての“正義”…」


――砂糖が足らないことは「長崎の遠か…」と例えると聞く。

佐賀を深く描くには、もっと広く長崎を知らねば…」
江戸時代、長崎幕府直轄の港だった。また、現在の長崎県にあたる地域には、佐賀藩の領地もあった。

そして大村藩平戸藩など…“西洋に近い”長崎にある各藩は、影日向に“幕末”に関わってきたのだ。

長崎には、いずれ向き合わねばなるまい。」
こうして長崎の甘味は、私の決意を新たにするのだった。

  
タグ :佐賀長崎


Posted by SR at 21:50 | Comments(0) | 「望郷の剣」シリーズ