2020年12月03日

連続ブログ小説「旅立の剣」(17)誇りを取り戻せ

こんばんは。

昨秋が降る夕暮れの記憶。旅の初日ラストスパートです。


――暮色…というより、とっぷり日が暮れた感じになった。

佐賀玉屋の地下街“玉ちか”。私は佐賀特産品を買い込んだ。地上に出て、県庁通りを渡り、長崎街道(白山通り)を早足にて進む

「人が…、少ない。」
アーケード街。酒類を出すお店は、これからという時間か。昼間に営業する店は、もうシャッターを下ろしている様子だ。



――それでも、私には寄るべき場所がある。

「何故、私は進み続けるのか…」
この旅の途上。時折、浮かんでは消える疑問

たしかに、佐賀の先人たちの功績を知った。

幕末から明治へと転換する時代。佐賀藩官軍への参加が遅かった。それでも、新政府佐賀が“薩長土肥”の一角を占めたのは必然だったようだ。

…だが、それは「いま、私が走る理由」になるのだろうか。


――おそらく、私を動かしているのは、理屈ではない。

私は歩みを速めた。かつて佐賀の志士たちは“義祭同盟”を結成し、この近くの龍造寺八幡宮に集った。参道でもある白山通りを行くのは、実に感慨深い

「…“エスプラッツ”、ここか!!」
佐賀市内の方、ズッコケないでほしい。

“どこかに討ち入りでもしそうな勢い”で記述したが…これは、私の旅日記だ。



――この商業ビルには、佐賀市の観光協会が入っている。

幕末佐賀藩大河ドラマ”が実現したには、多忙を極める組織だろう。

「今のうちから、充分なご準備を…」
これは心の声だ。窓口の人に語ったわけではない。

時刻は、もう18:00に近い。協会は営業終了時刻の間近。
観光客長崎分け合うことになるか。あるいは佐賀大河ドラマで、一番、潤うのは長崎かも知れん。」


――私の、心の声は続く。

「それよりも佐賀必要なのは、持続するブランド力…」
セリフでは、随分と勝手な事を言っているが、誰かに語ったものではない。

これらの思いつきを、説得力を持って人に伝えるためには、私自身相応の努力が要るからだ。実際の私は、関係資料やパンフレットを黙々と集めていた。

証拠だ!証拠固めが要るのだ!」
幕末期。佐賀が最も先進的で、日本中から熱い視線を集めたのは、それほど遠い昔のことではない。


(続く)

  


2020年12月02日

連続ブログ小説「旅立の剣」(16)佐賀玉屋での思索

こんばんは。
今年新語・流行語大賞(現代用語の基礎知識 選)は「3密」だとか。

年の瀬も近づき「昨年は…ずっと自由だったなぁ。新型コロナも無かったし…」と思う方もいるかもしれません。

最近、“連続ブログ小説”と称して、昨秋の話を投稿しています。わずか30時間(実動15時間)の佐賀滞在でしたが、1年前実行しておいて良かったです。


――ひとまず目的地の見聞は達した。

昼間には佐野常民記念館夕方大隈重信記念館の見学を完了した。これで佐賀七賢人のうち、2名記念館を回った。

「この勢いで、あと5名記念館も回るぞ!!」
…と言いたいが、佐賀七賢人で公式な“記念館”があるのは、2名だけらしい。

早朝から移動を始め、佐賀に入って11時からの6時間、ほぼ全力疾走だった。


――暮色迫る、佐賀の街。

「ありがとうございました。」
大隈記念館の受付に一声をかけて、退出する。

降り続ける雨。辺りも暗くなる取材すべき施設は、もう閉館時刻だ。

「そうだ…、まだ商業施設ならば開いている…」
に濡れて、街灯に光る路面を踏みしめる。


――県庁通りへと歩を進めた。時刻は、17時。

私は、佐賀玉屋にいた。ほぼ無意識百貨店まで来ていたのである。

「まだ…、今日のうちに出来る事があるはず…」
そんな思索をする私を、エスカレーターは淡々と上階へと運ぶ

このエスカレーターもまた「お客を上下に運ぶ使命を果たす者であるようだ。



――考え事をしたまま、南館6階の“巨大室内遊園地”フロアに着いた。

「おおっ!デパート遊園地と言えば、屋上が普通ではないのか!」
その景色が、私を考え事から解き放った。

「そうだ!この近く商業ビルの中に…」
私は、まだ寄るべき場所がある事に思い至った。

遠き故郷・佐賀帰藩して、“果たすべき使命”は何か。私は、「幕末佐賀藩大河ドラマ」実現の一助となるべく、走り始めたのではなかったか。


――そういう“志”もあるが、せっかく佐賀玉屋に来たのだ。

「このまま、立ち去るのも勿体(もったいない。」

私はくるりと回って、下りエスカレーターへと乗り換えた。地下1階食料品売り場を目指す。佐賀の“地下街”「玉ちか」に立ち寄るのだ。


(続く)