2020年08月24日
第13話「通商条約」⑦(誰に聞けばよかね?)
こんばんは。
皆様は困り事があったときに、どなたに相談するでしょうか。
藩校を退学になっている大隈八太郎(重信)、“義祭同盟”の仲間と関わりながら、次の一歩を踏み出そうとします。
――佐賀城下。大隈八太郎が、“義祭同盟”でも一緒に活動する久米丈一郎(邦武)と話している。
「それは、弘道館に戻った方が良いかと。」
大隈の友達、久米丈一郎(邦武)。
有田・皿山の代官など、藩の要職を歴任するエリート・久米邦郷の息子である。
「やはり、そがんね…」
大隈は、久米の反応が残念な様子だ。
「弘道館には、面白い書物が山のようにあります!」
久米はニッと笑った。意外とチャーミングである。
「いや、話を聞く相手を間違えたばい…」
「何ね…書物ば読み込むのは、楽しかですよ。」
この2人、仲は良いのだが、話がかみ合っていない。
後に政治家になる大隈と、歴史学者になる久米の興味の違いであろうか。

――向こうの方で、江藤新平と大木喬任(民平)が何やら議論する。
大木が渋い顔をする。
「相変わらず、神陽先生の問いは…ざっといかん(難しい)な。」
一方で江藤は、難しい“宿題”を前向きに捉えた様子だ。
「それゆえ“学び”になるのでは。」
江藤が、課題の解決策を切り出す。
「まず1つは、そこに山積みなる書物を通読し、論旨を拾うこと。」
「そうだな。」
――さらに江藤が声を張る。
「次に長崎より取り寄せた書物との、照し合せが肝要と存ずる。」
「お前が読みたいのは“長崎”の方だろう。山積みの方は、俺が引き受けた!」
そう言うと、大木はフッと笑った。
江藤の気持ちと、自身の得手を考え、分業の役割を決めた様子だ。
――こんな様子だ。どうやら本日、江藤と大木には意見が聞けそうにない。
そこに中野方蔵が現れる。今日も、江戸への留学を目指して奔走している。
「やぁ、皆、お揃いだね!」
「中野さん!相変わらず、お忙しそうですね。」
久米丈一郎も“義祭同盟”に加入して、すっかり城下に顔見知りが増えた様子だ。
「大木兄さんと江藤くんは居るかい!?」
「向こうで、神陽先生の問いを考えておられますよ。」
中野の問いかけに、久米が答える。
――神陽先生の課題は、簡単に答えが出せる類のものではない。
のちに日本の“司法”と“教育”の近代を切り開く2人。江藤と大木は、枝吉神陽の門下で“鍛えられて”いるのだ。
中野は“空気が読める”タイプである。
取り込み中の2人には、話しかけずに去るようだ。
「大隈くんじゃないか。母上さまはお元気かな。」
母・三井子が、よく手料理や菓子を出していたので、中野方蔵も、よく大隈の家には遊びに行っていた。
「思うようにならんことがあるんです。」

――大隈八太郎は、自身の退学で母・三井子が悩んでいることを語った。
「では、大隈くん。“蘭学”ならどうだい。お父上の跡目を継ぐにも良いよ。」
中野はスパッと提案した。その行動力で、情報収集に長じる。
「そがんですね!その手があった!」
亡くなった大隈の父の役職は、佐賀藩の“砲術長”だった。
いまや砲術を学ぶには、西洋の知識は不可欠であり、“蘭学寮”に入れば全ての辻褄(つじつま)が合う。
「中野さん!蘭学寮に入れるなら、“退学”もよかですね!」
「大隈くん…そういうことを言うと偉い人には嫌われるよ。身を立てるなら、言葉には気を付けんばね。」
――中野方蔵は、向こうで話し込んでいる武骨者・大木喬任と、“空気を読まない”江藤新平の友達である。
しかし、わりと要領の良い中野は、無鉄砲な大隈に「“出世”への道」を説くのであった。
この頃、一般的には“蘭学”が出世に有利という感覚はなく、あまり希望者の多い課程ではなかった。大隈の表情は、パッと明るくなったのである。
(続く)
皆様は困り事があったときに、どなたに相談するでしょうか。
藩校を退学になっている大隈八太郎(重信)、“義祭同盟”の仲間と関わりながら、次の一歩を踏み出そうとします。
――佐賀城下。大隈八太郎が、“義祭同盟”でも一緒に活動する久米丈一郎(邦武)と話している。
「それは、弘道館に戻った方が良いかと。」
大隈の友達、久米丈一郎(邦武)。
有田・皿山の代官など、藩の要職を歴任するエリート・久米邦郷の息子である。
「やはり、そがんね…」
大隈は、久米の反応が残念な様子だ。
「弘道館には、面白い書物が山のようにあります!」
久米はニッと笑った。意外とチャーミングである。
「いや、話を聞く相手を間違えたばい…」
「何ね…書物ば読み込むのは、楽しかですよ。」
この2人、仲は良いのだが、話がかみ合っていない。
後に政治家になる大隈と、歴史学者になる久米の興味の違いであろうか。

――向こうの方で、江藤新平と大木喬任(民平)が何やら議論する。
大木が渋い顔をする。
「相変わらず、神陽先生の問いは…ざっといかん(難しい)な。」
一方で江藤は、難しい“宿題”を前向きに捉えた様子だ。
「それゆえ“学び”になるのでは。」
江藤が、課題の解決策を切り出す。
「まず1つは、そこに山積みなる書物を通読し、論旨を拾うこと。」
「そうだな。」
――さらに江藤が声を張る。
「次に長崎より取り寄せた書物との、照し合せが肝要と存ずる。」
「お前が読みたいのは“長崎”の方だろう。山積みの方は、俺が引き受けた!」
そう言うと、大木はフッと笑った。
江藤の気持ちと、自身の得手を考え、分業の役割を決めた様子だ。
――こんな様子だ。どうやら本日、江藤と大木には意見が聞けそうにない。
そこに中野方蔵が現れる。今日も、江戸への留学を目指して奔走している。
「やぁ、皆、お揃いだね!」
「中野さん!相変わらず、お忙しそうですね。」
久米丈一郎も“義祭同盟”に加入して、すっかり城下に顔見知りが増えた様子だ。
「大木兄さんと江藤くんは居るかい!?」
「向こうで、神陽先生の問いを考えておられますよ。」
中野の問いかけに、久米が答える。
――神陽先生の課題は、簡単に答えが出せる類のものではない。
のちに日本の“司法”と“教育”の近代を切り開く2人。江藤と大木は、枝吉神陽の門下で“鍛えられて”いるのだ。
中野は“空気が読める”タイプである。
取り込み中の2人には、話しかけずに去るようだ。
「大隈くんじゃないか。母上さまはお元気かな。」
母・三井子が、よく手料理や菓子を出していたので、中野方蔵も、よく大隈の家には遊びに行っていた。
「思うようにならんことがあるんです。」
――大隈八太郎は、自身の退学で母・三井子が悩んでいることを語った。
「では、大隈くん。“蘭学”ならどうだい。お父上の跡目を継ぐにも良いよ。」
中野はスパッと提案した。その行動力で、情報収集に長じる。
「そがんですね!その手があった!」
亡くなった大隈の父の役職は、佐賀藩の“砲術長”だった。
いまや砲術を学ぶには、西洋の知識は不可欠であり、“蘭学寮”に入れば全ての辻褄(つじつま)が合う。
「中野さん!蘭学寮に入れるなら、“退学”もよかですね!」
「大隈くん…そういうことを言うと偉い人には嫌われるよ。身を立てるなら、言葉には気を付けんばね。」
――中野方蔵は、向こうで話し込んでいる武骨者・大木喬任と、“空気を読まない”江藤新平の友達である。
しかし、わりと要領の良い中野は、無鉄砲な大隈に「“出世”への道」を説くのであった。
この頃、一般的には“蘭学”が出世に有利という感覚はなく、あまり希望者の多い課程ではなかった。大隈の表情は、パッと明るくなったのである。
(続く)
Posted by SR at 21:28 | Comments(0) | 第13話「通商条約」
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