2020年04月14日
第8話「黒船来航」⑤
こんばんは。今日、累計で1万アクセスを超えていることに気づきました。
ブログを始めてから4か月、新型コロナの影響もあり、世界は色々と変わってしまっていますが、淡々と続けます。
前回、ついに鉄製大砲を完成した佐賀藩。今日は久しぶりに江藤新平が登場します…とはいえ、今話のタイトルは「黒船来航」です。並行して“国際情勢”も描きます。
――佐賀城下。江藤新平は藩校の寮から、実家に向かう。この頃、父・助右衛門(胤光)は、藩の貿易方の役職を務めていた。
江藤家は、父の役職が無かったときは、地縁のある小城に住んでいた。最近では、佐賀城下での暮らし向きも安定してきている。
しかし、子・新平の充分な学費のため、母・浅子は内職を続けていた。そして、親の期待以上に猛勉強する江藤。家に戻るのは久しぶりである。
「たまには母上を労(いた)わらねばならぬ…」
母・浅子は、新平の最初の「学問の師」と言って良い。小城に居た時分は、近所の子供たちに読み書きを教えて家計を支えていた。
のちに江藤は「女子の教育が、近代国家の程度を決める」と主張する。これは、教養のあった母の影響でもあった。

――江藤は、庭で洗濯をする若い女性を見かける。年の頃は20歳ぐらい。
「あら、恒ちゃん。」
江藤の幼名は“恒太郎”である。女性は、新平を子供の頃から知っているようだ。
「千代子どのか…“恒ちゃん”と呼ばわるのは、お止めいただきたい!」
なぜか家事を手伝っている女性。名を“江口千代子”という。
「なにゆえ、我が家で“物干し”をしておるのだ?」
続けて江藤が尋ねる。
「浅子おばさまが、忙しそうでしたから。」
千代子は、1歳年上の従姉(いとこ)である。
「…それは、かたじけない。恩に着る!」
江藤新平、素直に礼を言う。
――相変わらず、江藤の声はよく通る。
“本編”では江藤の声が通ると、“ビリビリ”と電流が走ったような描写を多用する。しかし、従姉(いとこ)の千代子には効力を発揮していないようだ。
「何やら千代子どのは、勝手が違うな…」
江藤は、遥か北の空を見上げた。
――突如、舞台は遠方に移る。ロシア・クロンシュタット軍港。(現在のサンクトペテルブルクにある港)。

ロシア海軍の水兵たちが並んでいる。
極東の島国、日本への出港の前日。
大勢の部下たちを前に、海軍中将プチャーチンが訓示をする。
「明日、我々は祖国ロシアより極東に旅立つ。」
すでに皇帝の“親書”はプチャーチンに託されていた。
「ロシアの将来に関わる大事な航海だ!気を引き締めてかかれ!」
鎖国を行っている日本に、通商を求め、国境の確定交渉まで行う意図である。
「はい!提督!」
艦隊の指揮権を持つプチャーチン。以降の肩書は“提督”としておこう。
――大柄なロシア人水兵たちはピリッとした表情である。
「さて、ここで船出を控えた諸君に問う。」
提督プチャーチンが、少し表情を緩めて語る。
「ウォッカは存分に飲んだか!故郷の料理は味わったか!…と。」
緊張の訓示から、やや“軽い”ことを言うプチャーチン。
「ハッハッハッ…はい!提督!」
提督から、急に気の抜ける質問を飛ばされ、水兵たちの表情も緩む。
「そして、心当たりの者はよく聞け!今から重要な事柄を言う。」
また、引き締まった顔をする提督。
――水兵たちが一斉に、提督プチャーチンに注目する。
「長い航海になるぞ!嫁がいる者はご機嫌を取っておけ!」
提督は“ロシアンジョーク”っぽく言い放った。
「ハッハッハッ…」
「提督!何をおっしゃるかと思えば…!」
まさか、もう一度“ジョーク”で来るとは。水兵たちから笑みが漏れる。
「いいな、明日からは厳しい航海だ!今日はゆっくりしておけ!」
「はい!提督!」
――水兵たちが声を揃える。皆、良い顔だ。提督プチャーチンは人望があるらしい。
「我らが祖国ロシアに栄光あれ!」
「ハラショー(素晴らしい)!ロシア!」
“黒船来航”と言えば、アメリカのペリーだが、その出港より1か月ほど前。ロシアのプチャーチンが、日本に向けて航海を始めていたという。
(続く)
ブログを始めてから4か月、新型コロナの影響もあり、世界は色々と変わってしまっていますが、淡々と続けます。
前回、ついに鉄製大砲を完成した佐賀藩。今日は久しぶりに江藤新平が登場します…とはいえ、今話のタイトルは「黒船来航」です。並行して“国際情勢”も描きます。
――佐賀城下。江藤新平は藩校の寮から、実家に向かう。この頃、父・助右衛門(胤光)は、藩の貿易方の役職を務めていた。
江藤家は、父の役職が無かったときは、地縁のある小城に住んでいた。最近では、佐賀城下での暮らし向きも安定してきている。
しかし、子・新平の充分な学費のため、母・浅子は内職を続けていた。そして、親の期待以上に猛勉強する江藤。家に戻るのは久しぶりである。
「たまには母上を労(いた)わらねばならぬ…」
母・浅子は、新平の最初の「学問の師」と言って良い。小城に居た時分は、近所の子供たちに読み書きを教えて家計を支えていた。
のちに江藤は「女子の教育が、近代国家の程度を決める」と主張する。これは、教養のあった母の影響でもあった。

――江藤は、庭で洗濯をする若い女性を見かける。年の頃は20歳ぐらい。
「あら、恒ちゃん。」
江藤の幼名は“恒太郎”である。女性は、新平を子供の頃から知っているようだ。
「千代子どのか…“恒ちゃん”と呼ばわるのは、お止めいただきたい!」
なぜか家事を手伝っている女性。名を“江口千代子”という。
「なにゆえ、我が家で“物干し”をしておるのだ?」
続けて江藤が尋ねる。
「浅子おばさまが、忙しそうでしたから。」
千代子は、1歳年上の従姉(いとこ)である。
「…それは、かたじけない。恩に着る!」
江藤新平、素直に礼を言う。
――相変わらず、江藤の声はよく通る。
“本編”では江藤の声が通ると、“ビリビリ”と電流が走ったような描写を多用する。しかし、従姉(いとこ)の千代子には効力を発揮していないようだ。
「何やら千代子どのは、勝手が違うな…」
江藤は、遥か北の空を見上げた。
――突如、舞台は遠方に移る。ロシア・クロンシュタット軍港。(現在のサンクトペテルブルクにある港)。

ロシア海軍の水兵たちが並んでいる。
極東の島国、日本への出港の前日。
大勢の部下たちを前に、海軍中将プチャーチンが訓示をする。
「明日、我々は祖国ロシアより極東に旅立つ。」
すでに皇帝の“親書”はプチャーチンに託されていた。
「ロシアの将来に関わる大事な航海だ!気を引き締めてかかれ!」
鎖国を行っている日本に、通商を求め、国境の確定交渉まで行う意図である。
「はい!提督!」
艦隊の指揮権を持つプチャーチン。以降の肩書は“提督”としておこう。
――大柄なロシア人水兵たちはピリッとした表情である。
「さて、ここで船出を控えた諸君に問う。」
提督プチャーチンが、少し表情を緩めて語る。
「ウォッカは存分に飲んだか!故郷の料理は味わったか!…と。」
緊張の訓示から、やや“軽い”ことを言うプチャーチン。
「ハッハッハッ…はい!提督!」
提督から、急に気の抜ける質問を飛ばされ、水兵たちの表情も緩む。
「そして、心当たりの者はよく聞け!今から重要な事柄を言う。」
また、引き締まった顔をする提督。
――水兵たちが一斉に、提督プチャーチンに注目する。
「長い航海になるぞ!嫁がいる者はご機嫌を取っておけ!」
提督は“ロシアンジョーク”っぽく言い放った。
「ハッハッハッ…」
「提督!何をおっしゃるかと思えば…!」
まさか、もう一度“ジョーク”で来るとは。水兵たちから笑みが漏れる。
「いいな、明日からは厳しい航海だ!今日はゆっくりしておけ!」
「はい!提督!」
――水兵たちが声を揃える。皆、良い顔だ。提督プチャーチンは人望があるらしい。
「我らが祖国ロシアに栄光あれ!」
「ハラショー(素晴らしい)!ロシア!」
“黒船来航”と言えば、アメリカのペリーだが、その出港より1か月ほど前。ロシアのプチャーチンが、日本に向けて航海を始めていたという。
(続く)
Posted by SR at 21:20 | Comments(0) | 第8話「黒船来航」
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