2020年04月15日
第8話「黒船来航」⑥
こんばんは。
新型コロナの影響で、空港の国際線がほとんど発着していないとのニュースを見ました。こんなブログを書いていますので、「久しぶりの鎖国…」とか思ってしまいます。
さて、今回は、副島種臣(枝吉次郎)が登場します。のちに明治初期には、“天皇親政”の故事に詳しいうえに、「アメリカ合衆国憲法」も学んでおり、新政府の組織づくりに不可欠だった人物です。
今のところ、ほぼ“枝吉神陽の弟”というポジションのため、周囲には“次郎”と呼ばれることが多いです。偉大な兄貴を持つとプレッシャーがかかるのは、洋の東西を問わないようで…
――佐賀藩は、枝吉次郎(二郎)を京都に留学させることを決定した。
「次郎よ、京の都で“国のかたち”を学ぶのだ。存分に励んで来い!」
枝吉神陽は、旅立つ弟・次郎を見送る。
「はい、兄さん!あるべき“国のかたち”を求めて、次郎は学んで参ります!」
“尊王”の志高い、枝吉兄弟にとって“京都”は特別な場所である。
――そして、京都。次郎(副島種臣)は“国学”の知識を深めるため、公家とも交流する。
「枝吉はんは、佐賀のお人ですな。どうどす、良いお庭でっしゃろ。」
ある公家に、京都の名庭を案内される次郎。
「はい、良きお庭にございますな。」
次郎は、実直に答える。
「よぅ、わかってはりますなぁ…」
公家たちは一筋縄ではいかない。次郎の“人物”を品定めしている様子だ。
「いや…実に素晴らしい。」
後に“書家”としても著名になる、次郎(副島種臣)。芸術的センスは抜群である。
シンプルに美しい庭に感銘を受けているようだ。

――同じ1852年。突如、太平洋と北米大陸を超えて、アメリカ東部。
バージニア州のノーフォーク港である。
「キビキビと準備を行え!出港の日は近いぞ!」
居並ぶアメリカ海軍の士官たち、年配の大柄な将官が大声で指示を出す。
「ハイ!ペリー提督!抜かりなく、手順どおり行います!」
アメリカ海軍のペリーは“代将”というクラスの軍人のようだ。
海軍大佐に特命事項が付いたような階級という。
しかし、艦隊の指揮権があることから、日本では“提督”との呼ぶのが一般的である。
――ペリーは18世紀生まれで、もう60歳くらいであるが、とても声がデカい。
さて、提督ペリーの部下たちの評判である。
「やれやれ!相変わらず元気だね。“熊おやじ”は。」
肩をすくめる水兵。
「“熊出没、注意!”ってか。無事の航海でも祈るか。」
別の水兵が話を受ける。このライトな感じがアメリカンである。
ペリー提督は、わりとしんどい上司のようだ。
――そして、提督はいたって真面目に“仕事”に取り組む。
ペリー提督は、遠く東洋の島国“日本”に向かう前に、色々と調べを進めていた。
「あの国は…外交上の回答を引き延ばすらしいな。」
「はい。提督!仰せのとおりです。」
秘書役の士官が応える。
「ナガサキには寄るべきでは無いのだな。」
何かと“圧”の強いペリー提督が、念を押す。
「はい。提督!オランダに妨害される恐れがあります!」
秘書役の士官も、ペリーに神経を遣い、話している様子だ。
――アメリカの秋。現在の暦で言えば11月頃。出港を控えたペリー。
遠い過去を回想する。まだ、アメリカ国内でイギリスと戦争をしていた頃だ。

現在のアメリカとカナダの国境には、いくつもの湖がある。
40年ばかり前。その“五大湖”の1つ、エリー湖で、米英の海軍が激突した戦いがあった。
当時、海軍に入隊したばかりの少年だったマシュー・ペリー。
双方の船が損傷する激戦の中、まるでコマ送りのように目に焼き付いた映像がある。
それは、1人の“英雄”の背中だった。
「撃て!北北東の敵船を逃すな!」
砲弾飛び交う中、果敢に船を乗り継いだかと思えば、イギリス船に猛攻撃を加える。ペリーの兄で、アメリカ海軍の“英雄”・オリバー・ペリーである。
――アメリカは工業地帯を抑え、優位に戦いを進める。そして、米国製の大砲が、イギリス海軍の船に火を吹く。
「マシュー!見たか、これが偉大なアメリカの力だ!」
「オリバー兄さん!」
“英雄”オリバーの弟であるマシュー・ペリー提督。
少年のときの記憶が、老いてなおペリーを駆り立てていた。
「偉大なアメリカの、世界への“足場”ができるぞ。オリバー兄さん!見ててくれ…」
そして、強い意気込みで、日本に向かっていた。
(続く)
新型コロナの影響で、空港の国際線がほとんど発着していないとのニュースを見ました。こんなブログを書いていますので、「久しぶりの鎖国…」とか思ってしまいます。
さて、今回は、副島種臣(枝吉次郎)が登場します。のちに明治初期には、“天皇親政”の故事に詳しいうえに、「アメリカ合衆国憲法」も学んでおり、新政府の組織づくりに不可欠だった人物です。
今のところ、ほぼ“枝吉神陽の弟”というポジションのため、周囲には“次郎”と呼ばれることが多いです。偉大な兄貴を持つとプレッシャーがかかるのは、洋の東西を問わないようで…
――佐賀藩は、枝吉次郎(二郎)を京都に留学させることを決定した。
「次郎よ、京の都で“国のかたち”を学ぶのだ。存分に励んで来い!」
枝吉神陽は、旅立つ弟・次郎を見送る。
「はい、兄さん!あるべき“国のかたち”を求めて、次郎は学んで参ります!」
“尊王”の志高い、枝吉兄弟にとって“京都”は特別な場所である。
――そして、京都。次郎(副島種臣)は“国学”の知識を深めるため、公家とも交流する。
「枝吉はんは、佐賀のお人ですな。どうどす、良いお庭でっしゃろ。」
ある公家に、京都の名庭を案内される次郎。
「はい、良きお庭にございますな。」
次郎は、実直に答える。
「よぅ、わかってはりますなぁ…」
公家たちは一筋縄ではいかない。次郎の“人物”を品定めしている様子だ。
「いや…実に素晴らしい。」
後に“書家”としても著名になる、次郎(副島種臣)。芸術的センスは抜群である。
シンプルに美しい庭に感銘を受けているようだ。
――同じ1852年。突如、太平洋と北米大陸を超えて、アメリカ東部。
バージニア州のノーフォーク港である。
「キビキビと準備を行え!出港の日は近いぞ!」
居並ぶアメリカ海軍の士官たち、年配の大柄な将官が大声で指示を出す。
「ハイ!ペリー提督!抜かりなく、手順どおり行います!」
アメリカ海軍のペリーは“代将”というクラスの軍人のようだ。
海軍大佐に特命事項が付いたような階級という。
しかし、艦隊の指揮権があることから、日本では“提督”との呼ぶのが一般的である。
――ペリーは18世紀生まれで、もう60歳くらいであるが、とても声がデカい。
さて、提督ペリーの部下たちの評判である。
「やれやれ!相変わらず元気だね。“熊おやじ”は。」
肩をすくめる水兵。
「“熊出没、注意!”ってか。無事の航海でも祈るか。」
別の水兵が話を受ける。このライトな感じがアメリカンである。
ペリー提督は、わりとしんどい上司のようだ。
――そして、提督はいたって真面目に“仕事”に取り組む。
ペリー提督は、遠く東洋の島国“日本”に向かう前に、色々と調べを進めていた。
「あの国は…外交上の回答を引き延ばすらしいな。」
「はい。提督!仰せのとおりです。」
秘書役の士官が応える。
「ナガサキには寄るべきでは無いのだな。」
何かと“圧”の強いペリー提督が、念を押す。
「はい。提督!オランダに妨害される恐れがあります!」
秘書役の士官も、ペリーに神経を遣い、話している様子だ。
――アメリカの秋。現在の暦で言えば11月頃。出港を控えたペリー。
遠い過去を回想する。まだ、アメリカ国内でイギリスと戦争をしていた頃だ。

現在のアメリカとカナダの国境には、いくつもの湖がある。
40年ばかり前。その“五大湖”の1つ、エリー湖で、米英の海軍が激突した戦いがあった。
当時、海軍に入隊したばかりの少年だったマシュー・ペリー。
双方の船が損傷する激戦の中、まるでコマ送りのように目に焼き付いた映像がある。
それは、1人の“英雄”の背中だった。
「撃て!北北東の敵船を逃すな!」
砲弾飛び交う中、果敢に船を乗り継いだかと思えば、イギリス船に猛攻撃を加える。ペリーの兄で、アメリカ海軍の“英雄”・オリバー・ペリーである。
――アメリカは工業地帯を抑え、優位に戦いを進める。そして、米国製の大砲が、イギリス海軍の船に火を吹く。
「マシュー!見たか、これが偉大なアメリカの力だ!」
「オリバー兄さん!」
“英雄”オリバーの弟であるマシュー・ペリー提督。
少年のときの記憶が、老いてなおペリーを駆り立てていた。
「偉大なアメリカの、世界への“足場”ができるぞ。オリバー兄さん!見ててくれ…」
そして、強い意気込みで、日本に向かっていた。
(続く)
Posted by SR at 22:10 | Comments(2) | 第8話「黒船来航」
この記事へのコメント
SR様、「足あと」を残していただき、ありがとうございます。ほぼ毎回拝読しています。南北戦争と幕末から明治維新/戊辰戦争の関係は、興味深いところです。英仏が”死の商人”の代名詞のようにみられていますが、アメリカはどうだったのでしょうか…。
Posted by saganichi at 2020年04月16日 12:28
saganichi様、こちらこそ、日々の佐賀のニュースのご提供ありがとうございます。めったにコメントが無いので、大変嬉しいです。
英仏やロシアに比べて、これから世界展開を進めたいアメリカは、粗削りな“ルーキー”として描きたいと考えています。
英仏やロシアに比べて、これから世界展開を進めたいアメリカは、粗削りな“ルーキー”として描きたいと考えています。
Posted by SR
at 2020年04月16日 21:12

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