2020年02月24日
第4話「諸国遊学」⑧
こんばんは。
昨日の続きです。今回も、大隈母が“歴史ドラマ”にはまったり、“佐賀の七賢人”(その3)島義勇が初登場したりと盛りだくさんです。
――大隈三井子は、枝吉神陽の勧めにより、歴史物語「太平記」を入手した!
あの神陽先生のように、賢い子になってほしい!…そんな母の想い。八太郎くんに「太平記」を読み聞かせる。
「ははうえ~、ごほんよむの?」
この八太郎くんは、後に明治を代表する偉人の1人になる。
しかし、幼い頃は、周囲に成長の度合いを心配される子だったという。
三井子は、常日頃から八太郎の成長を神仏に祈るほどだった。
――さて、ここからは、三井子による朗読とお考えいただきたい。“南北朝時代”の話である。
~“太平記”より「桜井の別れ」~
――後醍醐天皇のいる京の都に、足利尊氏が率いる数万の軍勢が迫る。
対して後醍醐天皇を守る側の楠木正成には、数百の兵しかいない。
かつて正成は河内(大阪)の千早城・赤坂城で、鎌倉幕府の6万とも言われる軍勢を打ち破ったことがある。
しかし、今回は得意の“山岳戦”ではない。
平地での“数万対数百”の決戦となる見通しだった。
――楠木正成は子・正行を呼んだ。
「此度、父は生きては帰れまい。」
「正行よ、もし儂が倒れても、そなたはきっと強く成長し、帝に忠義を尽くすのだ。」
「父上っ!」
そして、最後の戦いへと向かう楠木正成。
子・楠木正行はその後ろ姿を目に焼き付けていた。
~以上、三井子の朗読の設定は終了~
…これが“桜井の別れ”である。
――気持ちが入り過ぎて、自身の朗読で涙を流す、三井子。
「ははうえ…ないておられるのですか?だいじょうぶですか?」
心配そうに母の顔を見やる八太郎。
「いいですか!八太郎。楠公(なんこう)様のように強い武士になるのです!」
「はい!ははうえさま。」

――ちょうど父・大隈信保が帰宅する。砲術の担当者なので、最近とくに忙しい。
「いま、戻った…、で…何かあったのか。」
涙を流す三井子と、母の背中をさする八太郎。
「父上!今、良いところなので…。」
八太郎の姉は“母子2人の世界”を壊さぬよう、父・信保を玄関に引き戻した。
――大隈家に「太平記」ブームを起こした、枝吉神陽。
江戸への派遣前に、同い年のいとこ・島団右衛門(義勇)と話している。
「神陽は凄いな。“佐賀の誇り”じゃ。儂には、お主の足元も見えぬわ。」
「そう謙遜するな。“団にょん”も儂より優れた力を持っているぞ。」
妙な呼び名であるが、この“団にょん”が島義勇である。
後に、北海道の大都市・札幌の礎を築く人物。
――しかし、この頃は島義勇は、“天才”と自身を比較して焦っていた。
「儂が神陽にも無い力を持っていると!なんじゃ、それは!?」
「まだ、気づいていないと見えるな。」
「教えてくれ、神陽!」
「“団にょん”よ。本当の力は自身で見つけぬ限り、使いこなせぬ。努めて探すことだな。」
「神陽…厳しいのう!まぁお主なら、江戸でも全く難儀せぬだろうな!」
…枝吉神陽は、島には答えを示さなかった。
“問いかけ”によって、相手の成長を促す人物なのである。
島義勇は、札幌では“判官さま”と崇められているが、地元・佐賀では親しみやすく“団にょんさん”と呼ばれるという。
但し、仲間うちで“団にょん”と呼ばれていたかは定かではない。面白いと思ったので、使ってみた…
(続く)
昨日の続きです。今回も、大隈母が“歴史ドラマ”にはまったり、“佐賀の七賢人”(その3)島義勇が初登場したりと盛りだくさんです。
――大隈三井子は、枝吉神陽の勧めにより、歴史物語「太平記」を入手した!
あの神陽先生のように、賢い子になってほしい!…そんな母の想い。八太郎くんに「太平記」を読み聞かせる。
「ははうえ~、ごほんよむの?」
この八太郎くんは、後に明治を代表する偉人の1人になる。
しかし、幼い頃は、周囲に成長の度合いを心配される子だったという。
三井子は、常日頃から八太郎の成長を神仏に祈るほどだった。
――さて、ここからは、三井子による朗読とお考えいただきたい。“南北朝時代”の話である。
~“太平記”より「桜井の別れ」~
――後醍醐天皇のいる京の都に、足利尊氏が率いる数万の軍勢が迫る。
対して後醍醐天皇を守る側の楠木正成には、数百の兵しかいない。
かつて正成は河内(大阪)の千早城・赤坂城で、鎌倉幕府の6万とも言われる軍勢を打ち破ったことがある。
しかし、今回は得意の“山岳戦”ではない。
平地での“数万対数百”の決戦となる見通しだった。
――楠木正成は子・正行を呼んだ。
「此度、父は生きては帰れまい。」
「正行よ、もし儂が倒れても、そなたはきっと強く成長し、帝に忠義を尽くすのだ。」
「父上っ!」
そして、最後の戦いへと向かう楠木正成。
子・楠木正行はその後ろ姿を目に焼き付けていた。
~以上、三井子の朗読の設定は終了~
…これが“桜井の別れ”である。
――気持ちが入り過ぎて、自身の朗読で涙を流す、三井子。
「ははうえ…ないておられるのですか?だいじょうぶですか?」
心配そうに母の顔を見やる八太郎。
「いいですか!八太郎。楠公(なんこう)様のように強い武士になるのです!」
「はい!ははうえさま。」

――ちょうど父・大隈信保が帰宅する。砲術の担当者なので、最近とくに忙しい。
「いま、戻った…、で…何かあったのか。」
涙を流す三井子と、母の背中をさする八太郎。
「父上!今、良いところなので…。」
八太郎の姉は“母子2人の世界”を壊さぬよう、父・信保を玄関に引き戻した。
――大隈家に「太平記」ブームを起こした、枝吉神陽。
江戸への派遣前に、同い年のいとこ・島団右衛門(義勇)と話している。
「神陽は凄いな。“佐賀の誇り”じゃ。儂には、お主の足元も見えぬわ。」
「そう謙遜するな。“団にょん”も儂より優れた力を持っているぞ。」
妙な呼び名であるが、この“団にょん”が島義勇である。
後に、北海道の大都市・札幌の礎を築く人物。
――しかし、この頃は島義勇は、“天才”と自身を比較して焦っていた。
「儂が神陽にも無い力を持っていると!なんじゃ、それは!?」
「まだ、気づいていないと見えるな。」
「教えてくれ、神陽!」
「“団にょん”よ。本当の力は自身で見つけぬ限り、使いこなせぬ。努めて探すことだな。」
「神陽…厳しいのう!まぁお主なら、江戸でも全く難儀せぬだろうな!」
…枝吉神陽は、島には答えを示さなかった。
“問いかけ”によって、相手の成長を促す人物なのである。
島義勇は、札幌では“判官さま”と崇められているが、地元・佐賀では親しみやすく“団にょんさん”と呼ばれるという。
但し、仲間うちで“団にょん”と呼ばれていたかは定かではない。面白いと思ったので、使ってみた…
(続く)
Posted by SR at 19:15 | Comments(0) | 第4話「諸国遊学」
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