2020年03月28日
第7話「尊王義祭」⑦
こんばんは。
“佐賀の七賢人”の中でも全国区の知名度を持つ2人、江藤新平と大隈重信(八太郎)。「私の見たい大河ドラマ」のイメージでは、こんな場面で出会います。「母の愛」が賢人たちを繋げ、新時代を築いた…というとオーバーでしょうか。
――例の3人組(大木喬任、江藤新平、中野方蔵)が大隈家に乗り込む当日。
「大木さん、いきなり突入して良いのか。」
中野が大木につられて、物騒な言い方をする。
「構わん、仔細は…わが母上から伝わっておるはずだ。」
重ねて言う。これは“殴り込み”ではない。
母方の親戚筋である大木が友達を連れて、大隈家を訪問するのだ。
「私も行ってよかですかね。」
江藤が、あらためて大木に確認する。
平家の傍流として、血筋には誇りを持つ江藤だが、現在の家格は低い。一方、大隈家は、三百石の上級武士と言ってよい家柄である。
「無論だ!」
大木は口下手である。
年少の八太郎くんと面識はあるが、話が弾んだ記憶はない。
しかし、大木にとって大隈家訪問は、母・シカの頼みである。
年長者として、八太郎くんの為になる話をすべきだ。
――大木の“切り札”は2枚。「社交的な中野」と「弁の立つ江藤」である。

「御免!」
大隈家の玄関。
大木が、武骨な挨拶をする。
「あら、幡六くんとお友達ね。いらっしゃい。」
大隈の母・三井子である。
「お初にお目にかかります。大木さんの後輩で、中野と申します。」
ここで、爽やかな中野方蔵の登場である。
“尊王”の話でヒートアップしない限りは、コミュニケーション能力は高い。
「同じく江藤と申す。以後、お見知りおきを!」
やはり身なりは粗末、髪はバサバサのいつもの江藤である。
「江藤くん!少々、声が鋭いぞ…」
中野が、江藤をヒジで小突き、小声で注意した。
――大隈三井子は“女丈夫”とも言われた元気な女性である。
「まぁまぁ玄関先で立っていないで、こちらにお入りなさい。」
三井子は、先輩たちの来訪を歓迎する。
父・信保を失い、気落ちする八太郎に何か良い話をしてやってほしいという想いもある。
「八太郎っ~!先輩方がお越しですよ。挨拶ばせんね~!」
――大隈八太郎(のちの大隈重信)13歳。
「先輩方、わざわざお越しいただき、ありがとうございます。」
いきなり3人も年長者が来訪したので、訝しがる八太郎。
「八太郎、久しいな。まず、お父上様にご挨拶をしよう。」
大木は親族らしく、亡くなった大隈の父・信保の仏前に手を合わせに行った。
――その後の展開について、大木の読みは概ね当たった。2枚の“切り札”のおかげで大木自身は、ほぼ話す必要がなかったのである。
中野方蔵が熱く語る。
「私は神陽先生が率いる“楠公”さまの祭典に是非加わりたい!」
大隈八太郎が呼応する。
「中野さん!この八太郎も幼き頃より“楠公”に憧れてまいりました!」
「八太郎くん!年少ながら分かっているな!」
ちなみに中野も14歳である。八太郎と1歳しか違わない。
その様子を見ていた江藤が、大木に注意を促す。
「また、中野が興奮して、机を割らんようにせんばならんです。」
――そこに大隈の母・三井子が菓子を持ってきた。

これには、江藤がすかさず反応した。
「こがん美味そうな物、いただいてもよかですか!」
三井子の持ってきた菓子は、砂糖の入った甘いものだった。
「ええ、どうぞ。召し上がってくださいな。」
実は大食家である江藤。
常にお腹が空いているのである。
「甘い…、“長崎”が眼前に広がるがごた…」
――佐賀を通る“長崎街道”には“シュガーロード”という異名がある。
この甘い“砂糖”こそ、幸せの味。
異国情緒あふれる長崎の味なのである。
大隈家の生活は、父・信保が亡くなり“役職給”が外れてからは厳しいものだったようだ。しかし、大隈三井子は、子・八太郎の友達に手料理や菓子を振る舞いとても大事にしたという。
こうして賢い先輩たちの話を聞くことで、大隈八太郎は成長していく。
(続く)
“佐賀の七賢人”の中でも全国区の知名度を持つ2人、江藤新平と大隈重信(八太郎)。「私の見たい大河ドラマ」のイメージでは、こんな場面で出会います。「母の愛」が賢人たちを繋げ、新時代を築いた…というとオーバーでしょうか。
――例の3人組(大木喬任、江藤新平、中野方蔵)が大隈家に乗り込む当日。
「大木さん、いきなり突入して良いのか。」
中野が大木につられて、物騒な言い方をする。
「構わん、仔細は…わが母上から伝わっておるはずだ。」
重ねて言う。これは“殴り込み”ではない。
母方の親戚筋である大木が友達を連れて、大隈家を訪問するのだ。
「私も行ってよかですかね。」
江藤が、あらためて大木に確認する。
平家の傍流として、血筋には誇りを持つ江藤だが、現在の家格は低い。一方、大隈家は、三百石の上級武士と言ってよい家柄である。
「無論だ!」
大木は口下手である。
年少の八太郎くんと面識はあるが、話が弾んだ記憶はない。
しかし、大木にとって大隈家訪問は、母・シカの頼みである。
年長者として、八太郎くんの為になる話をすべきだ。
――大木の“切り札”は2枚。「社交的な中野」と「弁の立つ江藤」である。

「御免!」
大隈家の玄関。
大木が、武骨な挨拶をする。
「あら、幡六くんとお友達ね。いらっしゃい。」
大隈の母・三井子である。
「お初にお目にかかります。大木さんの後輩で、中野と申します。」
ここで、爽やかな中野方蔵の登場である。
“尊王”の話でヒートアップしない限りは、コミュニケーション能力は高い。
「同じく江藤と申す。以後、お見知りおきを!」
やはり身なりは粗末、髪はバサバサのいつもの江藤である。
「江藤くん!少々、声が鋭いぞ…」
中野が、江藤をヒジで小突き、小声で注意した。
――大隈三井子は“女丈夫”とも言われた元気な女性である。
「まぁまぁ玄関先で立っていないで、こちらにお入りなさい。」
三井子は、先輩たちの来訪を歓迎する。
父・信保を失い、気落ちする八太郎に何か良い話をしてやってほしいという想いもある。
「八太郎っ~!先輩方がお越しですよ。挨拶ばせんね~!」
――大隈八太郎(のちの大隈重信)13歳。
「先輩方、わざわざお越しいただき、ありがとうございます。」
いきなり3人も年長者が来訪したので、訝しがる八太郎。
「八太郎、久しいな。まず、お父上様にご挨拶をしよう。」
大木は親族らしく、亡くなった大隈の父・信保の仏前に手を合わせに行った。
――その後の展開について、大木の読みは概ね当たった。2枚の“切り札”のおかげで大木自身は、ほぼ話す必要がなかったのである。
中野方蔵が熱く語る。
「私は神陽先生が率いる“楠公”さまの祭典に是非加わりたい!」
大隈八太郎が呼応する。
「中野さん!この八太郎も幼き頃より“楠公”に憧れてまいりました!」
「八太郎くん!年少ながら分かっているな!」
ちなみに中野も14歳である。八太郎と1歳しか違わない。
その様子を見ていた江藤が、大木に注意を促す。
「また、中野が興奮して、机を割らんようにせんばならんです。」
――そこに大隈の母・三井子が菓子を持ってきた。

これには、江藤がすかさず反応した。
「こがん美味そうな物、いただいてもよかですか!」
三井子の持ってきた菓子は、砂糖の入った甘いものだった。
「ええ、どうぞ。召し上がってくださいな。」
実は大食家である江藤。
常にお腹が空いているのである。
「甘い…、“長崎”が眼前に広がるがごた…」
――佐賀を通る“長崎街道”には“シュガーロード”という異名がある。
この甘い“砂糖”こそ、幸せの味。
異国情緒あふれる長崎の味なのである。
大隈家の生活は、父・信保が亡くなり“役職給”が外れてからは厳しいものだったようだ。しかし、大隈三井子は、子・八太郎の友達に手料理や菓子を振る舞いとても大事にしたという。
こうして賢い先輩たちの話を聞くことで、大隈八太郎は成長していく。
(続く)
Posted by SR at 22:56 | Comments(0) | 第7話「尊王義祭」
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