2020年03月23日
第7話「尊王義祭」③
こんばんは。
江藤、大木に続いて、凄く久しぶりに、枝吉次郎(のちの副島種臣)が登場します。以前の登場では、カリスマのある兄・枝吉神陽と自身を比べて、迷っている姿を描きました。
当時の次郎は、なるべく優等生に見られるよう「周囲に受けの良い」学問をしていました。
そこで兄・神陽に一喝され、地道に勉強した結果、次郎は藩校で寮生を束ねる首班(リーダー)を務めています。
――枝吉次郎(副島種臣)は、藩校「弘道館」で人望を集める“良き先輩”である。
中野方蔵が次郎を見かけて、声をかける。
「枝吉(次郎)先輩、お話してもよろしいでしょうか。」
「おお、中野くんか。何か用かね。」
すっかり落ち着いた枝吉次郎。年齢は21歳である。
「それがし、面白き友を得ました。」
ここで中野は、最近知り合った江藤の話をした。
小城郡からの転入のため、江藤は「弘道館」の初等過程には通っていないのだ。
「そんなに面白いのか。」
「はい、とても奇抜で…優れた男です。」
年少ながらも行動力のある中野。次々に人を繋いでいく才能があった。
――その頃、藩校の片隅で江藤胤雄(新平)は考え事をしていた。

当人の頭の中は、超高速で回転をしている。こんな風に。
「日本の沿海で異国船が、不穏な動きをしているようだ。」
「だが、戦となれば敵わないだろう。尊王の志を果たそうにも、まず異国の業(技術)を取り入れねば…」
…が、傍目にはボーッとしているように見えた。
「おう、江藤。また考え事をしておったか。」
「大木さんにだけは、言われたくなかです。」
――大木幡六(喬任)が、すぐ横に来ていた。
大木もよく考え事をする。彼の場合は、もっと変わっている。
「俺が…古代中国、宋の国にいたとする。」
「そこで、高官の地位にいる俺は、政敵が罪人として引っ張られて来たところに出くわす。」
「しかし、その政敵が無実であることを、俺は知っているとする。」
「さぁ、どうする俺。真実を告げて政敵を救うか、あえて見過ごし邪魔者を排するのか!」
…大木の得意は“漢学”。ある意味、江藤よりぶっ飛んだ空想をしている。
“漢学”の歴史的背景を利用し、いわばデーターに基づくシミュレーションとして能力を磨くのが、大木流の鍛錬である。
――江藤、大木。“考え事”の2人組の前に、中野方蔵が現れる。
「大木さん、江藤くん、お揃いござるな。」
「おう、中野。来ていたのか。」
大木が応じる。大木は17歳、中野は14歳なのだが、あまり気にしている様子はない。
「先ほど、枝吉(次郎)先輩とお話しして参りました。」
中野が2人に話す。
「あの、神陽先生のご舎弟、次郎先輩か!」
江藤が反応する。
――枝吉次郎(副島種臣)も頑張っているのだが、いつも“神陽先生の弟”扱い。
兄貴がカリスマ過ぎると不憫である。
今は藩校「弘道館」でも教授を務める神陽。この日は佐賀城下の梅林庵という寺にいた。

「ご住職!これは、凄い宝物でござるぞ!」
枝吉神陽が、ただならぬ気配で言葉を発する。
神陽は、その木像を前に一礼し、少し後ろに下がって威儀を正す。そして、ビシッと背筋を正し、深々と座礼を行った。
「確かに古い物ではございますが…」
住職は、神陽の仰々しい態度を訝しがっている。
神陽が見つけた木像。
江戸時代初期に、ある佐賀藩士が作ったものである。
そこには、武将の父子の姿。
南北朝時代に、最後の戦いに向かう楠木正成と、子・正行の別れを描いた木像だった。
(続く)
江藤、大木に続いて、凄く久しぶりに、枝吉次郎(のちの副島種臣)が登場します。以前の登場では、カリスマのある兄・枝吉神陽と自身を比べて、迷っている姿を描きました。
当時の次郎は、なるべく優等生に見られるよう「周囲に受けの良い」学問をしていました。
そこで兄・神陽に一喝され、地道に勉強した結果、次郎は藩校で寮生を束ねる首班(リーダー)を務めています。
――枝吉次郎(副島種臣)は、藩校「弘道館」で人望を集める“良き先輩”である。
中野方蔵が次郎を見かけて、声をかける。
「枝吉(次郎)先輩、お話してもよろしいでしょうか。」
「おお、中野くんか。何か用かね。」
すっかり落ち着いた枝吉次郎。年齢は21歳である。
「それがし、面白き友を得ました。」
ここで中野は、最近知り合った江藤の話をした。
小城郡からの転入のため、江藤は「弘道館」の初等過程には通っていないのだ。
「そんなに面白いのか。」
「はい、とても奇抜で…優れた男です。」
年少ながらも行動力のある中野。次々に人を繋いでいく才能があった。
――その頃、藩校の片隅で江藤胤雄(新平)は考え事をしていた。

当人の頭の中は、超高速で回転をしている。こんな風に。
「日本の沿海で異国船が、不穏な動きをしているようだ。」
「だが、戦となれば敵わないだろう。尊王の志を果たそうにも、まず異国の業(技術)を取り入れねば…」
…が、傍目にはボーッとしているように見えた。
「おう、江藤。また考え事をしておったか。」
「大木さんにだけは、言われたくなかです。」
――大木幡六(喬任)が、すぐ横に来ていた。
大木もよく考え事をする。彼の場合は、もっと変わっている。
「俺が…古代中国、宋の国にいたとする。」
「そこで、高官の地位にいる俺は、政敵が罪人として引っ張られて来たところに出くわす。」
「しかし、その政敵が無実であることを、俺は知っているとする。」
「さぁ、どうする俺。真実を告げて政敵を救うか、あえて見過ごし邪魔者を排するのか!」
…大木の得意は“漢学”。ある意味、江藤よりぶっ飛んだ空想をしている。
“漢学”の歴史的背景を利用し、いわばデーターに基づくシミュレーションとして能力を磨くのが、大木流の鍛錬である。
――江藤、大木。“考え事”の2人組の前に、中野方蔵が現れる。
「大木さん、江藤くん、お揃いござるな。」
「おう、中野。来ていたのか。」
大木が応じる。大木は17歳、中野は14歳なのだが、あまり気にしている様子はない。
「先ほど、枝吉(次郎)先輩とお話しして参りました。」
中野が2人に話す。
「あの、神陽先生のご舎弟、次郎先輩か!」
江藤が反応する。
――枝吉次郎(副島種臣)も頑張っているのだが、いつも“神陽先生の弟”扱い。
兄貴がカリスマ過ぎると不憫である。
今は藩校「弘道館」でも教授を務める神陽。この日は佐賀城下の梅林庵という寺にいた。
「ご住職!これは、凄い宝物でござるぞ!」
枝吉神陽が、ただならぬ気配で言葉を発する。
神陽は、その木像を前に一礼し、少し後ろに下がって威儀を正す。そして、ビシッと背筋を正し、深々と座礼を行った。
「確かに古い物ではございますが…」
住職は、神陽の仰々しい態度を訝しがっている。
神陽が見つけた木像。
江戸時代初期に、ある佐賀藩士が作ったものである。
そこには、武将の父子の姿。
南北朝時代に、最後の戦いに向かう楠木正成と、子・正行の別れを描いた木像だった。
(続く)
Posted by SR at 21:56 | Comments(0) | 第7話「尊王義祭」
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