2022年03月19日

「武雄よ、共〔とも〕に…」

こんばんは。
春のセンバツ高校野球は、昨日(18日)の雨天により、本日(19日)に開幕していますね。

有田工業の試合も1日遅れ、22日(火)第1試合と表示されています。

試合日程が延びたことで有田工が勝ち進まない限り、私はその活躍をリアルタイムで見ることはできないようです。


――しかし、このぐらいで挫ける私ではありません。

「私は佐賀藩士(?)だから耐えられる…」という、いつもの論法。そして逆転の発想で語ります。

「…試合が1日延びたなら、この記事を書く!」というわけで、今春の高校野球に便乗して、今度は有田の東にある“武雄”を語ります。

今回大会の有田工業高校のメンバーですが、有田町の隣にある、武雄市の中学から進学した選手も多いようです。

これは、出身選手の地元・武雄でも自慢したいポイントのようで、関係者各位はきっと盛り上がっているはず…。



――この記事、佐賀に詳しくない人がお読みの可能性も。

もしや「武雄ぶゆう〕って呼んでもいいか?」と、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の上総広常〔演:佐藤浩市〕っぽい事を言い出す方もいるかもしれません。

佐賀県の地名は武雄〔たけお〕と読みます。間違っても、「お前も俺も、武雄〔ぶゆう〕。みんな武雄〔ぶゆう〕だ~!」と盛り上がらないようにお願いします。

この辺りは『鎌倉殿…』に出た、いわゆる“武衛〔ぶえい〕コント”の真似です。ご存じない皆様は、さらりと流してください。

「言葉の誤解があって、が“将軍クラス”の呼ばれ方をする…」という、今年大河ドラマならではの、とても面白い場面でした。


――しかし“武雄”〔たけお〕とは、やはり強そうな地名。

実はその名に違わない“強者”。幕末から明治にかかる激動の時代。佐賀藩武雄領と言えば“武芸第一”とまで称されたという精鋭揃い。

しかも「腕っぷしが強い」という粗野な印象ではなく、近代化が進んでいた先進地域だったことに理由があるようです。

戊辰戦争の際には旧幕府方で“無敗”と恐れられた庄内藩(山形)をくい止め、新政府側に付いて、孤立した久保田藩(秋田)を救う等の活躍が伝わります。


※そんな縁もあり、秋田の竿燈祭りが武雄にお目見えしたことも…

――早期に“黒船来航”を想定し、

長崎では外国船に備えた砲台を築くなど、異国に対抗するために強くなった、佐賀藩にとって、不本意だったはずの国内での戦い。

葛藤はあったかもしれませんが、武雄領精鋭たちは奮戦し、長引かせては危うい内戦の早期終結に貢献することになりました。

その「武雄の物語」の始まりは、今から二百年前ほど昔。幕末期、佐賀藩の名君として知られる鍋島直正公が、まだ10歳前後の少年だった頃。


――のちの名君には“兄貴分”が存在しました。

佐賀藩には、支藩自治領が多かったのですが、もとは龍造寺一門の“武雄鍋島家”もその1つ。

当ブログでは幕末の黎明期から活躍し、佐賀藩近代化先導していた武雄領主・鍋島茂義公の役回りに注目して綴ってきました。

“蘭癖”(西洋かぶれ)と評される鍋島茂義は、一回り年下の義弟(妻の弟)にあたる、鍋島直正に多大な影響を与えたようです。



――そんな“蘭学兄貴”・茂義公の背中を見つめて。

西洋砲術の導入、科学技術の研究、欧米からの文物収集、家来の語学習得への派遣。よほど自由に行動したかったか、早期に隠居するところまで…

武雄領主鍋島茂義が先んじて行った事。まるで、その背中を追いかけていたような佐賀藩主・鍋島直正

このように佐賀藩の政策を進めた結果、幕末期には、日本の近代化トップランナーになったと考えています。

その茂義公が語学を習得させようと、長崎に派遣した武雄の人・山口尚芳(範蔵)は、もっと知られてほしい方。「やまぐち ますか」とお読みするのが一般的。

明治初期の“岩倉使節団”の副使で、有名な写真に映った五人のうちの1人。勤王志士ですが西洋事情に詳しい「スマートな紳士」との印象を持っています。
〔参照:「魅力度と“第三の男”(前編)」「魅力度と“第三の男”(後編)」


※右下の写真(一部)に注目。ハットを胸前に携えたジェントルマン。それが、山口尚芳

――幕末期の先進地・武雄から、世界に雄飛した陶磁器の町・有田へ。

そう考えると、私には近隣の2市町ではあるものの、何だか“壮大な進学”をした学生さんたち…という見え方をします。

甲子園で勝ち進む事も楽しみですが、佐賀のものづくりの伝統を受け継いだ、工業高校としての存在感にも期待するところがあります。

ある映像で有田工業の学生さんが課題に取り組む姿を見かける機会があったのですが、すごく真剣な“良い目”をしていたと記憶するのです。

…現在のところ、有田工業の出場試合は、22日(火)の第1試合。

私のように放送時間に見られない方も多いと思います。地元・佐賀から、いや、全国から応援ができる皆様。よろしくお願いします。