2020年10月24日

「醒覚の剣」(満干)

こんばんは。
今週末は「秋の佐賀城公園イベント」が開催されていますね。
〔参照:「“さが維新まつり”について」

私も現地で「佐賀さいこう!」と唱和したいのですが、そこには高い壁が生じています。なかなか帰郷できない佐賀藩士(?)を描く「望郷の剣」シリーズです。

…念のためご説明します。“本編”から離れて、ありふれた現代の日常を幕末っぽく表現する“息抜き”の投稿です。


――今年、新型コロナの感染症の影響は、随所に現れる。

これは、私の都市圏での“生業”とも無関係ではなかった。

帰郷の自粛のみならず、増えた仕事が追い打ちとなった。遠い郷里・佐賀がますます遠ざかる日々。私が現地取材に出向くにも、困難な状況が続く。

そこで手を差し伸べたのが、叔父上である。
写真?良かったら撮るよ。どうせヒマやけん。」

…実際は叔父上も、わりと忙しい。しかし、私はその言葉に甘えると決めた。

「醒覚の剣」(満干)

――そして、ある日。叔父上からの荷物が届いた。

私は「写真情報もその中に入れた」と聞いていた。叔父上は、先日の伊万里市大川内山に続き、今度は鹿島市太良町有明海沿いを歩んだ。
〔参照:「醒覚の剣」(秘窯)

結構な労力である。もし、祖母が存命であれば、きっと「ご苦労さんだにゃあ」と評したであろう。荷物の中には、叔父上からの贈り物も詰められていた。

1つは“クレメンティンまんじゅう。“クレメンティン”は希少柑橘類で、太良町特産として知られる。


――江戸期の長崎では、目的品の空きスペースに“脇荷”と呼ばれる品を積んで貿易したと聞く。

市場での“希少価値”がある原料。何やら長崎貿易ロマンを感じる響きだ。しかし、叔父上からの贈り物は、太良町の特産だけではなかった。

「これは“丸ぼうろ”ではないですか!しかも、相当に大きい…」
「随分、押し込んだけん。つぶれとらんね?」

「いえ、完全な姿の“丸ぼうろ”が見えます。」
「それは、良かったばい。」

電話口で礼を言う。叔父上は、の“丸ぼうろ”への想いを覚えていたらしい。
〔参照:「望郷の剣2」

「醒覚の剣」(満干)

――有明海では、満ち引きで最大約6メートルの潮位の差が生じる。

日本一の“干満差”という説明が付くことが多い。

干満の差は、そこに住まう人々に海苔コハダといった水産資源という恵みも、海水が陸地に逆流する災いも与えてきたことだろう。


――今日も有明の海は、潮の満ち引きを繰り返す。

きっと人生良い時ばかりでも、悪い時ばかりでもない。

与えられた状況をどう活かすかは、自分次第なのだ。」
有明沿海人々は、ずっとそのように生きてきたに違いない。

「そして…凹んでも、また膨らめば良い。」
叔父上の送ってきた積荷に有明の風を想う。凹んでも膨らむ“丸ぼうろ”には、“不屈”の精神を見出すのであった。






同じカテゴリー(「望郷の剣」シリーズ)の記事画像
「遠路の剣Ⅲ(泥海)」
「遠路の剣Ⅱ(金波)」
「遠路の剣(雑踏)」
「望郷の剣6」
「醒覚の剣(蛙歌)」
「再会の剣」
同じカテゴリー(「望郷の剣」シリーズ)の記事
 「遠路の剣Ⅲ(泥海)」 (2024-01-01 22:01)
 「遠路の剣Ⅱ(金波)」 (2023-12-29 22:43)
 「遠路の剣(雑踏)」 (2023-12-23 22:58)
 「望郷の剣6」 (2022-08-29 22:34)
 「醒覚の剣(蛙歌)」 (2022-06-24 21:57)
 「再会の剣」 (2022-03-05 22:04)

Posted by SR at 19:33 | Comments(2) | 「望郷の剣」シリーズ
この記事へのコメント
SRさま
連日、イノシシの地元太良町を取り上げてくださりありがとうございます。
大漁神社の海中鳥居。私も時々立ち寄りますが、満ち潮時に中々立ち会うことができません。
ご参考までに、多良岳山頂から海中鳥居の線をずっと伸ばしていくとその先には、英彦山神宮、そして、厳島神社につながってそうですよ。
Posted by 多良岳に寝ころぶイノシシ多良岳に寝ころぶイノシシ at 2020年10月24日 20:30
多良岳に寝ころぶイノシシ様

おはようございます。地図を見ながら、有明海を横断し、福岡県を超えて、広島の厳島神社に至るのか…とか考えていました。
“聖地”が一直線に並ぶ話は、よく聞くのですが、天体の運行などが関係しているのかしれませんね。

そして、太良町のキャッチコピーが「月の引力が見える町」だと知りました。なんだかカッコ良いので、覚えておきたいと思います。

個人的に厳島神社と言えば、大河ドラマ「平清盛」の印象が強いです。
私が投稿している第14話では、太良町を“ロケ地”とした画像も使っているのですが、いつか「幕末佐賀藩の大河ドラマ」が実現した日には、太良町での撮影もあったら面白いな…と空想しています。
Posted by SRSR at 2020年10月25日 10:05
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。