2023年10月01日

「“別藩”~BEPPAN~第4話」

こんにちは。思いつきで始まった企画ですが、ふだん私が語っている佐賀藩とは、“別の藩”の話をラストまで書きます。

幕末の転換期には、少数の精鋭で激しく戦った、大村藩の物語。このシリーズの最終話では、より深く佐賀の物語ともつながってきます。

私が描くなら、そのエピローグは、ある夫婦が施設の子供たちを見守る、優しいまなざしで締めくくりたいと思います。


前回の特集は、幕末から明治への時代の転換期に活躍した渡辺清でしたが、その筆子も、明治期に教育の分野で知られた人です。


――日本の中でも、西洋の風が吹き込んでいた肥前国(佐賀・長崎)。

現在の、長崎県にある大村市。江戸期、日本の中の“西洋”だった長崎港からの情報をすごく得やすい位置にあり、やはり先進的な地域だったようです。

大村藩出身の渡辺清には、幕政の資料を集め回って、それを近代国家につなげようとした、佐賀江藤新平の意図が理解できたのかもしれません。
〔参照(後半):「“別藩”~BEPPAN~第3話」

近隣の佐賀藩と同じように、近代に続く、新しい知識が入っていた大村藩からは、明治の世に公衆衛生教育の分野でも先駆者が出ています。



――現在、佐賀バルーンミュージアム前にも銅像がある、石井筆子。

なぜ、大村出身の女性・石井筆子の銅像が佐賀にあるかと言えば、佐賀出身の男性と力を合わせて、夫婦で志を果たしたからです。

この佐賀市内の銅像は、その夫婦の姿なのですが、経緯から見ると、一緒に大事なものを守ってきた、”同志”のような関係性が強く感じられます。

の名は、石井亮一佐賀藩の重臣の家系に生まれ、明治期に濃尾地震が発生した時には、災害の孤児人身売買から保護する活動をしていました。

その過程で“知的障がい”の子どもに出会ったことで、その分野での教育方法を学ぼうと、アメリカに留学して研究をするほどの人物です。



――その妻は明治期、“鹿鳴館の華”の1人だった筆子。

こちらもヨーロッパ留学歴があり、強い意思を感じさせる、凜とした容姿を“日本一の美人”と讃える外国人もいたとか。

鹿鳴館といえば、日本が西洋に追いつこうとした気持ちを、「まず、見た目から」表したような洋館と感じられます。

筆子は、明治維新の功労者・渡辺清の娘として、その期待にも応えて、時代の最先端だった女性でした。

しかし、目鼻立ちの整った、華やかな笑顔の裏では、に“知的障がい”があることに悩んでいました。

そして、現代とは違って、“知的障がい”を理解する人もいなかったところ、前夫に先立たれて、途方に暮れていたようです。


――そんな時、佐賀出身の石井亮一と知り合います。

敬虔なクリスチャンだった石井亮一は、自身に課せられた使命と信じたのか、当時の日本人には、ほぼ理解されない分野で、道を切り開いていきました。

亮一は、災害孤児の保護から展開して、本格的に“精神発達遅滞”(知的障がい児)の教育について研究を始めたようです。

筆子は、障がいを持ったの相談をする立場でしたが、亮一の考え方に共鳴して、熱心に支援するようになります。


やがて2人は一緒に活動することが増えて、再婚をすることになった経緯があるようです。

2人が力を合わせて創設した、日本で(東洋でも)最初の知的障がい児施設の運営は、困難を極めたようですが、これも“神の愛”の賜物なのか。

危機を迎えるたびに心強い協力者が手を差し伸べて、現在でも施設は立派に活動を続け、2人のをつないでいるようです。


――私の視点で書くならば…という、大村藩のお話です。

タイトルの着想元は、大河ドラマとは他局の番組だったのですが、書いていると、最終話は何だか“朝ドラ”で見たいような展開に。

幕末期、少数精鋭で激しく戦った大村藩の物語。明治期には、優しい目線を感じるラストになったような気がします。

ただ、弱い立場の子供たちを守ろうとすれば、そこには強い意思が必要で、やはり石井筆子は、大村侍の娘だな…という印象です。


※明治維新時点での大村藩主、大村純熈公の像。

最終話にキリスト教が関係してきますが、戦国時代の大村といえばキリシタン大名のイメージが強いので、そこもつながっているのかな…と思います。
〔参照:「西九州にほえろ!」

さて、佐賀の近くにある“別の藩”を語りました。長崎県大村市は、個人的に直接の縁はないのですが、調べていて、とても興味深いところがあります。


――「佐賀藩の大河ドラマ」のイメージを考える過程で…

をまとめるのは、難しいのですが、九州北部の各地域の要素を、“本編”でも上手くまとめられれば、書き進めやすくなるのかもしれません。

おそらく様々な形で、これからも試行錯誤は続いていくのだと思います。



○参考記事
「私の失策とイルミネーションのご夫婦(前編)」
「私の失策とイルミネーションのご夫婦(後編)」
連続ブログ小説「聖地の剣」(26)もう1つの“忘れ物”




  


Posted by SR at 16:47 | Comments(0) | 企画案・雑記帳