2020年02月10日

第3話「西洋砲術」③-1

こんばんは。
第3話の中盤(③)では“日本史”の教科書で見たような事件をなるべく載せていきます。

③西洋砲術の夜明け

――砲術の師匠・高島秋帆は、約束どおり佐賀藩・武雄領を訪ねてきた。

長崎にて鋳造しましたにございます。」
高島秋帆が持参した手土産は、なんと青銅製大砲だった。

武雄領主・鍋島茂義が感心する。
「ほほう…!見事なものだ。」

覗き込んだ茂義家来たち、奇妙な大砲に興味を惹かれている。
うす)の如き形でござるな。」

「左様。この“モルチール”は“臼砲”とも呼ばれております。」
第3話「西洋砲術」③-1

茂義は、まず高島秋帆に礼を言う。
高島どの。気遣い恐れ入る!そして伝習をよろしく頼む!」

――ドン!

佐賀藩武雄領の空に轟音が響く。

高島秋帆平山醇左衛門、そして幾人かの門下生が訓練を披露する。

オランダ人の師匠に学んだ砲術が、“高島流”の基本である。
律儀な高島は師の流儀を守り、号令はすべてオランダ語である。

指揮役武雄領の平山醇左衛門が務めた。
普段は物静かな平山が、覇気のある声を張る。

「マルス!(進め)」
ザッザッザッ…規則的に前進を行う。

「ハルト!(止まれ)」
隊列は静止した。

しばしの沈黙。テキパキと準備をこなす門下生たち。
「ヒュール!(撃て)」


――ドン!ドン!

火薬の匂いが漂い、白煙がたなびく。

臼砲モルチール砲)が火を吹き、次々に目標近くに着弾する。

「おおっ!これが西洋砲術!“高島流”の神髄であるか!」
茂義感銘を受けていた。

そして早速、武雄領でも青銅製モルチール砲を造ることを決断した。
大砲製造の責任者も、やはり平山醇左衛門が担当する。

後に日本産業革命を先導する佐賀藩、その先陣を切ったのが武雄領と言うことになる。

幕末黎明期、いわば佐賀藩の“秘密研究所”は既に動き始めていたのである。

(続く)



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Posted by SR at 21:28 | Comments(0) | 第3話「西洋砲術」
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