2020年02月01日
第2話「算盤大名」③-3
こんにちは。
鍋島直正が、初めて江戸から佐賀に入ったときの逸話をもとに構成したお話を続けています。
第2話の中盤(③)の3回目の投稿です。
――旅の序盤、品川で借金の取り立てに遭った、鍋島家の大名行列。
家来たちに、少しでも資金を節約しようとの意識が強まり、宿場での滞在時間を削る等の涙ぐましい努力を重ねた。
そして、品川宿以降、概ね1か月の道中は平穏で、一行も落ち着きを取り戻していた。
鍋島直正は行列の中心で、大名駕籠に乗っている。
――行列は、長崎街道を西に進み、轟木宿(現在の佐賀県・鳥栖市)に差し掛かった。
「殿!もうじき佐賀の藩内に入ります!」
品川では、資金繰りのため江戸に駆け戻った家来が、駕籠の外から直正に声をかける。
何とかお国入りまで持ちこたえた。行列の差配役として、声の調子も明るい。
「では、馬を用意してくれぬか。」
「馬でございますか。」
「早速だが、領内を見ておきたいのじゃ。」
「左様なことなれば!殿にお馬を支度せよ!」
行列の差配役の家来が、部下に指示をする。
――直正は駕籠から降り、馬に跨った。
どこまでも広がる田園風景。
大都会・江戸の佐賀藩邸で生まれ育った直正にとって、目新しい光景だった。
「ここが、余が治める国…」
江戸からの長旅。直正の感慨もひとしおだった。
「そして余が何とかせねばならんのだな。」
旅の出鼻を挫かれた品川宿での騒動を思い起こし、すぐに気を引き締めた。
――しばらく行列とともに、馬を進める。
「新しいお殿様じゃ。」
「なんと凛々しい。」
「お噂どおり、とてもお若い…」
領民たちが遠巻きに行列を見守る。
直正は、少しでも領内を見聞しようと落ち着きなく周囲を見回しているので、領民たちと目が合う。
「新しいお殿様は…儂らのことを見てくださっているぞ!」
「なんと!我ら下々の者にまで目配りを!!」
「ありがたや…」
手を合わせる者まで現われ始めた。
お殿様と目が合ったことをきっかけに、領民たちのひそひそ話は、歓声へと変わっていく。
「お殿様~!!!」
遠方から聞こえる声も合わせ、長閑な農村風景は、突如お祭りが始まったようになった。
1人の藩士として行列に加わっていた、直正の教育係・古賀穀堂がつぶやく。
「領民たちの歓声…雷の如し。殿はそれだけ期待されておりますぞ…」
――佐賀藩内を移動し、ようやく佐賀城に入った直正。

佐賀城の大広間には重臣一同が集められていた。
「殿のお成りである。」
「はは~っ」
重臣たちだけでも、数十人いや百人を超えるだろうか。
一斉に威儀をただし、平伏にて座礼をする。
「皆の者、面を上げよ!」
また一斉に顔を見せる重臣たち。
この面々に対して、挨拶もそこそこに直正は言い放った。
「余は此度の国元への旅で、お家の苦しい勝手向き(財政)を知った。」
――就任の挨拶で終わるかと考えていた重臣たち。いきなり核心に入る若殿の言葉にざわめく。
そして、直正はこう続けた。
「この危難に立ち向かうためには、余が率先して倹約し、範を示さねばならぬ。何としてもやり遂げる。お主らも同様に励んでほしい。」
藩主就任早々、いきなりの財政の「危機宣言」と「倹約徹底」の指示。
古くからの重臣たちが呆気に取られたところは否めなかった。
(続く)
鍋島直正が、初めて江戸から佐賀に入ったときの逸話をもとに構成したお話を続けています。
第2話の中盤(③)の3回目の投稿です。
――旅の序盤、品川で借金の取り立てに遭った、鍋島家の大名行列。
家来たちに、少しでも資金を節約しようとの意識が強まり、宿場での滞在時間を削る等の涙ぐましい努力を重ねた。
そして、品川宿以降、概ね1か月の道中は平穏で、一行も落ち着きを取り戻していた。
鍋島直正は行列の中心で、大名駕籠に乗っている。
――行列は、長崎街道を西に進み、轟木宿(現在の佐賀県・鳥栖市)に差し掛かった。
「殿!もうじき佐賀の藩内に入ります!」
品川では、資金繰りのため江戸に駆け戻った家来が、駕籠の外から直正に声をかける。
何とかお国入りまで持ちこたえた。行列の差配役として、声の調子も明るい。
「では、馬を用意してくれぬか。」
「馬でございますか。」
「早速だが、領内を見ておきたいのじゃ。」
「左様なことなれば!殿にお馬を支度せよ!」
行列の差配役の家来が、部下に指示をする。
――直正は駕籠から降り、馬に跨った。
どこまでも広がる田園風景。
大都会・江戸の佐賀藩邸で生まれ育った直正にとって、目新しい光景だった。
「ここが、余が治める国…」
江戸からの長旅。直正の感慨もひとしおだった。
「そして余が何とかせねばならんのだな。」
旅の出鼻を挫かれた品川宿での騒動を思い起こし、すぐに気を引き締めた。
――しばらく行列とともに、馬を進める。
「新しいお殿様じゃ。」
「なんと凛々しい。」
「お噂どおり、とてもお若い…」
領民たちが遠巻きに行列を見守る。
直正は、少しでも領内を見聞しようと落ち着きなく周囲を見回しているので、領民たちと目が合う。
「新しいお殿様は…儂らのことを見てくださっているぞ!」
「なんと!我ら下々の者にまで目配りを!!」
「ありがたや…」
手を合わせる者まで現われ始めた。
お殿様と目が合ったことをきっかけに、領民たちのひそひそ話は、歓声へと変わっていく。
「お殿様~!!!」
遠方から聞こえる声も合わせ、長閑な農村風景は、突如お祭りが始まったようになった。
1人の藩士として行列に加わっていた、直正の教育係・古賀穀堂がつぶやく。
「領民たちの歓声…雷の如し。殿はそれだけ期待されておりますぞ…」
――佐賀藩内を移動し、ようやく佐賀城に入った直正。
佐賀城の大広間には重臣一同が集められていた。
「殿のお成りである。」
「はは~っ」
重臣たちだけでも、数十人いや百人を超えるだろうか。
一斉に威儀をただし、平伏にて座礼をする。
「皆の者、面を上げよ!」
また一斉に顔を見せる重臣たち。
この面々に対して、挨拶もそこそこに直正は言い放った。
「余は此度の国元への旅で、お家の苦しい勝手向き(財政)を知った。」
――就任の挨拶で終わるかと考えていた重臣たち。いきなり核心に入る若殿の言葉にざわめく。
そして、直正はこう続けた。
「この危難に立ち向かうためには、余が率先して倹約し、範を示さねばならぬ。何としてもやり遂げる。お主らも同様に励んでほしい。」
藩主就任早々、いきなりの財政の「危機宣言」と「倹約徹底」の指示。
古くからの重臣たちが呆気に取られたところは否めなかった。
(続く)
Posted by SR at 15:08 | Comments(0) | 第2話「算盤大名」
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