2020年01月30日
第2話「算盤大名」③-1
こんばんは。
第2話も中盤。今回から本格的に鍋島直正が登場します。
放送開始から20分経過のイメージです。
③“品川の悲劇”と佐賀へのお国入り
――鍋島直正(当時は斉正と名乗る)、数え年で17歳。
参勤交代があった時代。大名の妻(正室)と世継ぎの子は江戸に留め置かれた。そのため、直正は江戸で生まれ育っている。
直正は第10代佐賀藩主に就任し、生まれて初めて佐賀に入ることになった。
現代の感覚でいえば、まだ少年である。
若殿は佐賀に向かう旅路に高揚しているのか、頬が紅潮している。
「盛よ。儂は初めて国に入るぞ。しばし会えぬが江戸の留守を頼む。」
「初めてのお国入り。おめでとうござります。」
直正が話している相手は妻(正室)である。
盛姫は、江戸幕府第11代将軍・徳川家斉の娘。
直正よりは3歳年上ではあるが、こちらも顔立ちにまだ幼さを残す。
将軍家の中でも、大事に育てられた姫で人柄も良い。
大名のご正室といえば、ほぼ政治的な結婚である。
いわゆる“仮面夫婦”も多いのだが、この2人の仲は良好だった。
――盛姫が嫁いだのは、直正が12歳の頃。
婚礼の翌年。儀式のため、佐賀藩の藩祖(初代藩主の父)・鍋島直茂公の甲冑(鎧)が江戸に持ち込まれた。
その時、盛姫は将軍の娘でありながら、恭しく直茂公の鎧に向かって跪き、直正との間に世継ぎが誕生することを祈願した。
鍋島直正が敬愛して止まない、佐賀藩の藩祖・鍋島直茂。
将軍家の姫にして、この態度を示す盛姫を直正は好ましく想った。
「もしも公儀(幕府)の力添えが必要なことがあれば、私にもお伝えください。」
「盛は、意外に心配性じゃのう。“もしも”の時は、頼りにしておるぞ。」
盛姫の心配をよそに、直正は少年らしく陽気に笑った。
藩主となった直正の旅立ち。
江戸の佐賀藩邸から、大名行列は意気揚々と出発する。
佐賀までは遠い道のり。江戸より街道を西に向かう。
――品川宿に到着した。鍋島家の行列は最初の休憩を取る。
「与一よ。佐賀に着いたら、儂は国を豊かにするぞ。まずは領内を、そして長崎を見聞せねば!」
「はっ、私も殿のお供をいたします!」
直正は“与一”というお供の少年に決意を語っていた。
古川与一は“松根”の名で知られる、幼少期からの直正の側近である。
「それにしても、ひと休みが長いようじゃな。皆、早くも疲れたのかのう。」
「殿…おかしゅうございますな。与一が確かめて参ります。」
与一が様子見に来たことを受け、大名行列の差配をする家来の1人が姿を見せた。
「殿。お耳に入れておきたい話がございます。落ち着いてお聞きくだされ…」
それが良くない話であることは明らかだった。
(続く)
第2話も中盤。今回から本格的に鍋島直正が登場します。
放送開始から20分経過のイメージです。
③“品川の悲劇”と佐賀へのお国入り
――鍋島直正(当時は斉正と名乗る)、数え年で17歳。
参勤交代があった時代。大名の妻(正室)と世継ぎの子は江戸に留め置かれた。そのため、直正は江戸で生まれ育っている。
直正は第10代佐賀藩主に就任し、生まれて初めて佐賀に入ることになった。
現代の感覚でいえば、まだ少年である。
若殿は佐賀に向かう旅路に高揚しているのか、頬が紅潮している。
「盛よ。儂は初めて国に入るぞ。しばし会えぬが江戸の留守を頼む。」
「初めてのお国入り。おめでとうござります。」
直正が話している相手は妻(正室)である。
盛姫は、江戸幕府第11代将軍・徳川家斉の娘。
直正よりは3歳年上ではあるが、こちらも顔立ちにまだ幼さを残す。
将軍家の中でも、大事に育てられた姫で人柄も良い。
大名のご正室といえば、ほぼ政治的な結婚である。
いわゆる“仮面夫婦”も多いのだが、この2人の仲は良好だった。
――盛姫が嫁いだのは、直正が12歳の頃。
婚礼の翌年。儀式のため、佐賀藩の藩祖(初代藩主の父)・鍋島直茂公の甲冑(鎧)が江戸に持ち込まれた。
その時、盛姫は将軍の娘でありながら、恭しく直茂公の鎧に向かって跪き、直正との間に世継ぎが誕生することを祈願した。
鍋島直正が敬愛して止まない、佐賀藩の藩祖・鍋島直茂。
将軍家の姫にして、この態度を示す盛姫を直正は好ましく想った。
「もしも公儀(幕府)の力添えが必要なことがあれば、私にもお伝えください。」
「盛は、意外に心配性じゃのう。“もしも”の時は、頼りにしておるぞ。」
盛姫の心配をよそに、直正は少年らしく陽気に笑った。
藩主となった直正の旅立ち。
江戸の佐賀藩邸から、大名行列は意気揚々と出発する。

――品川宿に到着した。鍋島家の行列は最初の休憩を取る。
「与一よ。佐賀に着いたら、儂は国を豊かにするぞ。まずは領内を、そして長崎を見聞せねば!」
「はっ、私も殿のお供をいたします!」
直正は“与一”というお供の少年に決意を語っていた。
古川与一は“松根”の名で知られる、幼少期からの直正の側近である。
「それにしても、ひと休みが長いようじゃな。皆、早くも疲れたのかのう。」
「殿…おかしゅうございますな。与一が確かめて参ります。」
与一が様子見に来たことを受け、大名行列の差配をする家来の1人が姿を見せた。
「殿。お耳に入れておきたい話がございます。落ち着いてお聞きくだされ…」
それが良くない話であることは明らかだった。
(続く)
Posted by SR at 22:04 | Comments(0) | 第2話「算盤大名」
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。