2022年08月17日

連続ブログ小説「聖地の剣」(10)遠き日のメモリアル

こんばんは。
ここ2回ほどは有田工業高校が気になって、また寄り道をしていました。

現在は、九州北部の大雨が心配なところですが、ひとまずは佐賀市内での「活動記録」に戻ります。

夏が来る直前に帰藩した主目的は、佐賀県立博物館にありました。明治維新150年を記念して、2018年に開催された『肥前さが幕末維新博覧会』。

その志を引き継ぐべく、この場所で“メモリアル展示”が行われています。コロナ禍で随分出遅れましたが、その「体感映像」は鑑賞することができました。


――佐賀駅の到着からは、概ね1時間半。

この間、駅前の商業施設「コムボックス」を見て回り、駅前バスターミナルより佐賀市営バスで移動。

佐賀城の手前にて下車。県立博物館に着くや、“高輪築堤”の展示に見入り、嬉野紅茶に癒やされる…と大体、こんな展開だ。

佐賀は「何もなかところ…」という話だけは聞くが、実際に見て回るには時間がまったく足らないと感じる。


――「さて、そろそろ上映のようだ。」

博覧会の体感映像を見るべく、暗いブースの中へと入ると、すでに幾人かの先客がいる。

意外だった。延々と再上映を繰り返しているはずだが、結構、見に来ている人がいる時間帯に当たったようだ。

この映像は、博覧会時の「幕末維新記念館」に来場した気分を味わえるように構成されている様子だ。

連続ブログ小説「聖地の剣」(10)遠き日のメモリアル

――ドーンと表示される“明治維新”。

その幕開けの時期に存在したであろう展開も、ドラマチックに映し出される。

鍋島が動いた!」
諸外国の視点を強く意識しており、日本人同士で争うことには否定的だった、幕末期佐賀藩

できれば国内では戦いたくなかったはずの、佐賀の大殿(前藩主)・鍋島直正決断を迫られた。その苦悩が映し出される。


――「もはや、戦いは始まってしまった。」

戊辰戦争の緒戦だった、鳥羽伏見の戦いは薩摩長州などの倒幕勢力が、勝利を収めた。

当時の情勢で、佐賀藩幕府方に肩入れし、もしくは態度を保留し続ければ、内戦は泥沼化していく可能性が高かった…と考えている。

会場のブース内には、鍋島直正決断の声が響く。大意はこうだ。
「なるべく強力な武器を使わず、なるべく戦を早く終わらせよ。」


――声が渋い。少し、ぞくっとするような良い演出だ。

佐賀藩が、新政府側に加わった。この決断に「これで勝負あった…」と感じた諸藩も多かったはずだ。

始まった戦いを終わらせる…この局面では、それが最善手だったのだろう。

西洋に近い先進地域、幕府寄りと見られた佐賀藩の参加で、明治新政府が、薩摩長州のみが占めるものではない…という見せ方もできたようだ。

第1場は、先ほどの展開が大詰めだったと思う。薩長土肥の一角になぜ肥前(佐賀)が入ったかの説明になっていた。

連続ブログ小説「聖地の剣」(10)遠き日のメモリアル

――“体感映像”と言うだけあって…

2018年(平成30年)に博覧会のパビリオンを訪れた来場者視点で映像は続く。会期中に足を運ぶことができなかった私には、ありがたい構成である。

この体感映像で見る限り、展示会場内の通路は暗く、さまざまな幕末の光景や情報が、映し出されていた様子で、興味深い。

開催時に来てみたかった…」という気分も高まるが、それは致し方ない。


――第2場は、佐賀藩の技術について。

黒衣の姿をした語り手(弁士)が、流れる映像を背景として、模型などを手に軽妙な口調で進める。見た目、デジタルアナログの融合という感じだ。

日本近代化のトップランナーとして、幕末の黎明期(夜明け前)から走り続けてきた、佐賀藩

鉄製大砲を造る反射炉、異国船に備えた長崎の台場、船舶等に動力を得る蒸気機関…と次々に技術開発を進めてきた。

連続ブログ小説「聖地の剣」(10)遠き日のメモリアル

――この「からくり劇場」の語り手は、佐賀藩の技術者のようだ。

長く先頭を走り続けた殿様・鍋島直正の背中を慕って、家来の技術者たちも、結果を出そうと苦闘する。

その見据えていた先は、未来日本だった。このような展開を見せられると、やっぱり私は涙腺にくるのだ。



(続く)






同じカテゴリー(連続ブログ小説「聖地の剣」)の記事画像
連続ブログ小説「聖地の剣」(27)同じ空を見ていた
連続ブログ小説「聖地の剣」(26)もう1つの“忘れ物”
連続ブログ小説「聖地の剣」(25)舞いあがれ、バルーン
連続ブログ小説「聖地の剣」(24)シン・放送会館
連続ブログ小説「聖地の剣」(23)見映え以上のSAGA
連続ブログ小説「聖地の剣」(22)ドント・セイ・グッバイ
同じカテゴリー(連続ブログ小説「聖地の剣」)の記事
 連続ブログ小説「聖地の剣」(27)同じ空を見ていた (2022-11-10 22:13)
 連続ブログ小説「聖地の剣」(26)もう1つの“忘れ物” (2022-11-06 21:49)
 連続ブログ小説「聖地の剣」(25)舞いあがれ、バルーン (2022-11-02 22:57)
 連続ブログ小説「聖地の剣」(24)シン・放送会館 (2022-10-29 22:29)
 連続ブログ小説「聖地の剣」(23)見映え以上のSAGA (2022-10-26 22:17)
 連続ブログ小説「聖地の剣」(22)ドント・セイ・グッバイ (2022-10-22 19:56)

Posted by SR at 21:11 | Comments(0) | 連続ブログ小説「聖地の剣」
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。