2020年05月05日

第9話「和親条約」⑦

こんばんは。

幕末、1853年の夏。アメリカペリーが浦賀に来航してから、1か月半ほど後、佐賀藩士たちは、長崎に築いた砲台ロシア船と対峙します。今回は、佐賀藩側からの視点でご覧ください。


――砲台築造の責任者・伊東次兵衛と警備の佐賀藩士が台場に詰める。

頼みの150ポンド砲は、抜かりなく準備されていた。
「船の白帆が見えてきました!」

警備の佐賀藩士の目に映ったのは、ロシア艦隊の旗艦“パルラダ号”である。提督プチャーチンは、この艦に乗船している。

「伊東様!何やら白い旗が見えます!」
「なんだ…」
伊東次兵衛は、遠眼鏡で様子を伺う。
第9話「和親条約」⑦

――旗には「おろしや国」(ロシア国)と、わざわざ日本語で大書してあった。

「我々に敵対する気持ちは無い!ということでしょうか。」
「いや、待て!たしか50年ほど前だが…」

1804年ロシアレザノフが長崎に来航。
長崎では暴れなかったが、日本北方襲撃事件を起こす。
「あの国は、牙を剥くことがある。用心に越したことはない。」


――そして佐賀藩士が忘れるはずもない45年前のフェートン号事件。

1808年オランダ国旗で偽装したイギリス船が、長崎に侵入して騒乱を起こした。
「あの失態だけは繰り返してはならん!くれぐれも油断するな!」

「はっ!」
砲台を守る藩士たちは、それぞれの持ち場で睨みを利かせる。


――提督の統制のもと、ロシア艦隊は敵対行動を起こすことなく長崎港に到着した。

湾内に入った提督プチャーチン。ホッとひと息を着く。
「やけに緊張感がある台場だったな。あの守備隊妙な気迫は何だ!?」

――幕府の予想に反して、慎重な態度を見せるロシア艦隊。季節は晩夏から秋となっていたが、おとなしく長崎に停泊している。

ロシア艦隊の副官が告げる。
提督!よろしいでしょうか。急ぎお伝えしたい件があります!」

ここでプチャーチンに“ある知らせ”が入った。日露交渉は一旦先送りになるのである。


(続く)


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Posted by SR at 20:14 | Comments(0) | 第9話「和親条約」
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